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2021年1月31日日曜日

古井由吉と「おもしろい」

 

人は自分の内にどんなひどい悪意があるのか、なかなか気がつかないものですよ。恨みとか、憎しみとかね。それがどこでどう表に出てくるかわからない。節度というのは、自分の内には何が潜んでいるかわからないと自覚するところから出てくるものじゃないかしら。(古井由吉「生と死の境、「この道」を歩く」「群像」2019年4月号)


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古井由吉はおもしろいよ

こういう風に書いてくれるところがとりわけおもしろい


あれはおもしろいの、おもしろくないの、と人は気安く言う。それでその本の値打ちはすっかり踏めたかのように。しかしそれよりも先に、自分のほうの読解力や感受力や、事柄への関心の厚い薄いを、ひそかに踏んで見るべきなのだ。(『書く、読む、生きる』2020年)


「なるほど」とうなずいちゃったよ


本を読みながら、「なるほど」とうなずいては、「何がなるほどだ。ろくに知らないくせに」と自分であきれることがある。

読書とは幾分か、知ったかぶりの楽しみでもあるのか。(古井由吉『書く、読む、生きる』2020年)