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2021年5月21日金曜日

あたしをおいてきぼりにして独りで済ましちゃいや

 バタイユの書は手元に一冊もないのだが、30歳前後に読んだ処女作『眼球譚』、とくに冒頭はいいねえ。以下はネットから拾ったものだが、この齢になってもウットリするよ、

糊のきいた白襟の黒っぽい学生服

膝の上まである黒い絹靴下

猫用のミルクを入れた皿

「お皿は、お尻をのっけるためにあるのよ」

彼女は私の硬直した竿が半ズボンを突っ張らせるのを見つめたいた

白いミルクの中で冷やされた彼女の < ピンク色と黒色の肉体 > 

ミルクが腿をつたって靴下にまで垂れるのがみえた

「あたしをおいてきぼりにして独りで済ましちゃいや」

なんてさ

私はたいそう孤独な生い立ちだった。おまけに物心ついて以来、性的な事柄に悩まされつづけてきた。あれは十六歳頃のことだ、***海岸で、シモーヌという、私と同い年の娘と出遇った。お互いの家族が遠縁関係にあることがわかったとき、ふたりのあいだは急速に親密の度を加えた。知り合って三日後、シモーヌと私は彼女の別荘にふたりきりで残された。彼女の方は糊のきいた白襟の黒っぽい学生服を着込んでいたのを覚えている。彼女と向かい合っているときにこちらが感じるそわそわした思い、それを彼女のほうでも分かち合っていることに私はうすうす気づきはじめていた。この日はとくに落ち着かず、学生服の下に、彼女がなにも着込んでいないことを私は期待するのだった。


J’ai été élevé seul et, aussi loin que je me le rappelle, j’étais anxieux des choses sexuelles. J’avais près de seize ans quand je rencontrai une jeune fille de mon âge, Simone, sur la plage de X... Nos familles se trouvant une parenté lointaine, nos relations en furent précipitées. Trois jours après avoir fait connaissance, Simone et moi étions seuls dans sa villa. Elle était vêtue d’un tablier noir et portait un col empesé. Je commençais à deviner qu’elle partageait mon angoisse, d’autant plus forte ce jour-là qu’elle paraissait nue sous son tablier.


膝の上まである黒い絹靴下をはいているのはわかった、がお尻のあたりまでは覗けなかった(シモーヌを相手に私はよくこのお尻という言葉を使ったが、性の用語のなかでもこれはとりわけ素晴らしいものに思えるのだった)。学生服を後ろからちょろっと捲り上げるだけで、彼女の淫らな部分が覗けそうだった。


Elle avait des bas de soie noire montant au-dessus du genou. Je n’avais pu encore la voir jusqu’au cul (ce nom que j’employais avec Simone me paraissait le plus joli des noms du sexe). J’imaginais seulement que, soulevant le tablier, je verrais nu son derrière.


たまたま、廊下の片隅に猫用のミルクを入れた皿が置かれていた。

「お皿は、お尻をのっけるためにあるのよ」シモーヌが言い出した。「賭けをしない?あたしこのお皿の上に坐ってみせるわ。」

「坐れるもんか」私はやり返した、息をはずませて。 


Il y avait dans le couloir une assiette de lait destinée au chat.

Les assiettes, c’est fait pour s’asseoir, dit Simone. Paries-tu ? Je m’assois dans l’assiette.

Je parie que tu n’oses pas, répondit-je, sans souffle.


恐ろしく暑い日だった。シモーヌはお皿を小さな床几の上に据えると、私の真正面に陣取った。私の顔をまともに見つめながら、徐々に彼女はしゃがみ込むのだった、ほてった臀を冷たいミルクの中に浸すさまはスカートのかげになって私には見えなかったが。こちらは頭に血がのぼり、身をわななかせながら、 彼女の前に立ちつくしていた。いっぽう彼女は私の硬直した竿が半ズボンを突っ張らせるのを見つめたいた。そこで私は彼女の足もとに腹ばいになった、が彼女のほうは身じろぎもしなかった。こうしてはじめて私は、白いミルクの中で冷やされた彼女の < ピンク色と黒色の肉体 > を目にしたのである。どちらも同じように興奮し、私たちはいつまでも身じろぎもせずにとどまっていた。 


Il faisait chaud. Simone mit l’assiette sur un petit banc, s’installa devant moi et, sans quitter mes yeux, s’assit et trempa son derrière dans le lait. Je restai quelque temps immobile, le sang à la tête et tremblant, tandis qu’elle regardait ma verge tendre ma culotte. Je me couchai à ses pieds. Elle ne bougeait plus ; pour la première fois, je vis sa « chair rosé et noire » baignant dans le lait blanc. Nous restâmes longtemps immobiles, aussi rouges l’un que l’autre.


突然、彼女は立ち上がった。ミルクが腿をつたって靴下にまで垂れるのがみえた。私の頭上に突っ立ったまま彼女は、小さな床几に片足を掛け、濡れたハンカチで丹念に拭き取るのだった、そして私のほうは床の上で身もだえしながらズボンごしに自分の竿を夢中でしごきまくるのだった。こうして私たちはほとんど同時気をやることに成功したのだ、お互いに一指も触れ合うことなく。


Elle se leva soudain : le lait coula jusqu’à ses bas sur les cuisses. Elle s’essuya avec son mouchoir, debout par-dessus ma tête, un pied sur le petit banc. Je me frottais la verge en m’agitant sur le sol. Nous arrivâmes à la jouissance au même instant, sans nous être touchés l’un l’autre. 〔・・・〕


自慰を繰り返したくて矢も盾もたまらず、家へ駆け戻った。 そして、あくる日の午後は、眼のふちにひどい隈をこさえていた。 シモーヌは私の顔をまじまじと見つめ、突然私の肩に顔を埋めると、 真剣な口調でこう言うのだった。 「あたしをおいてきぼりにして独りで済ましちゃいや」 


Je rentrai chez moi en courant, avide de me branler encore. Le lendemain, j’avais les yeux cernés. Simone me dévisagea, cacha sa tête contre mon épaule et me dit : « Je ne veux plus que tu te branles sans moi. »(バタイユ『眼球譚』1928年、生田耕作訳 Bataille , Histoire de l'œil  Simone)



どうしてシモーヌみたいに言ってくれなかったんだろ

十四歳のとき学校帰りに道にあった廃屋に入り込んで

ちょっとしたオイタを繰り返したが挿れさせてはくれなかったあの少女は?

毎日、眼のふちにひどい隈をこさえていたのに

「あたしをおいてきぼりにして独りで済ましちゃいや」って。