いやあなんでわかんねえんだろ、「不気味なもの」ってのは、フロイトラカンの核心概念のひとつで前期ラカン後期ラカンなんて関係ない。おバカをまともに受け取ったらダメだ、これだけは強調しておく。
簡単に列挙するよ。
①まず享楽の対象とは喪われた対象であり、これがモノ=母だ。
享楽の対象としてのモノは、快原理の彼岸にあり、喪われた対象である[Objet de jouissance …La Chose…au niveau de l'Au-delà du principe du plaisir…cet objet perdu](Lacan, S17, 14 Janvier 1970、摘要) |
モノは母である[das Ding, qui est la mère ](Lacan, S7 16 Décembre 1959) |
②モノは現実界であり、死の欲動だ。 |
フロイトのモノを私は現実界と呼ぶ[La Chose freudienne …ce que j'appelle le Réel ](ラカン, S23, 13 Avril 1976) |
死の欲動は現実界である。死は現実界の基盤である[La pulsion de mort c'est le Réel …la mort, dont c'est le fondement de Réel ](Lacan, S23, 16 Mars 1976) |
③享楽の対象としてのモノの別名は外密だ。
享楽の対象は、外密のポジションにある。ラカンはこの外密をモノの名として示した。[Cet objet de la jouissance …comme occupant une position extime, …c'est ce que Lacan a désigné du nom de la Chose](J.-A. Miller,Introduction à l'érotique du temps, 2004) |
外密とは、ラカンがフロイトの不気味なものを仏語に翻訳した語だ。これは仏語のWikipediaにさえも記述されている、ーー《外密という語は、フロイトの不気味なものの翻訳として使用された。Le mot d’extimité […] est à l'époque surtout utilisé comme une traduction du unheimlich de Freud 》(Wikipedia) ④要するにモノ(母)=外密=異者=不気味なものである。 |
私の最も内にある親密な外部、モノとしての外密[extériorité intime, cette extimité qui est la Chose](ラカン, S7, 03 Février 1960) |
モノの概念、それは異者としてのモノである[La notion de ce Ding, de ce Ding comme fremde, comme étranger](Lacan, S7, 09 Décembre 1959) |
異者がいる。…異者とは、厳密にフロイトの意味での不気味なものである[Il est étrange… étrange au sens proprement freudien : unheimlich] (Lacan, S22, 19 Novembre 1974) |
⑤そして不気味なもの=反復強迫=死の欲動。 |
不気味なものとして感知されるものは、内的反復強迫を思い起こさせるものである[daß dasjenige als unheimlich verspürt werden wird, was an diesen inneren Wiederholungszwang mahnen kann.](フロイト『不気味なもの 』第2章、1919年) |
われわれは反復強迫の特徴に、何よりもまず死の欲動を見出だす[Charakter eines Wiederholungszwanges …der uns zuerst zur Aufspürung der Todestriebe führte.](フロイト『快原理の彼岸』第6章、1920年) |
こうして「不気味なもの」を介在させて②と⑤の合致がある。
以上、不気味なもの(最も親密な外部)=喪われた対象=モノ=異者=母であり、究極の喪われた対象としての不気味なものは母胎である。
例えば胎盤は、個体が出産時に喪う己の部分、最も深く喪われた対象を表象する[le placenta par exemple …représente bien cette part de lui-même que l'individu perd à la naissance ](ラカン、S11、20 Mai 1964) |
人には、出生とともに、放棄された子宮内生活へ戻ろうとする欲動、母胎回帰がある。Man kann mit Recht sagen, mit der Geburt ist ein Trieb entstanden, zum aufgegebenen Intrauterinleben zurückzukehren, […] eine solche Rückkehr in den Mutterleib. (フロイト『精神分析概説』第5章、1939年) |
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女性器は不気味なものである。das weibliche Genitale sei ihnen etwas Unheimliches. しかしこの不気味なものは、人がみなかつて最初はそこにいたことのある場所への、人の子の故郷への入口である。Dieses Unheimliche ist aber der Eingang zur alten Heimat des Menschenkindes, zur Örtlichkeit, in der jeder einmal und zuerst geweilt hat. 冗談にも「愛は郷愁だ」と言う。 »Liebe ist Heimweh«, behauptet ein Scherzwort, |
そして夢の中で「これは自分の知っている場所だ、昔一度ここにいたことがある」と思うような場所とか風景などがあったならば、それはかならず女性器、あるいは母胎であるとみなしてよい。und wenn der Träumer von einer Örtlichkeit oder Landschaft noch im Traume denkt: Das ist mir bekannt, da war ich schon einmal, so darf die Deutung dafür das Genitale oder den Leib der Mutter einsetzen. したがっての場合においてもまた、不気味なものはこかつて親しかったもの、昔なじみのものである。この言葉(unhemlich)の前綴 un は抑圧の徴なのである。 Das Unheimliche ist also auch in diesem Falle das ehemals Heimische, Altvertraute. Die Vorsilbe » un« an diesem Worte ist aber die Marke der Verdrängung. (フロイト『不気味なもの Das Unheimliche』1919年) |
どこをどうひっくり返してもまがいようがない。おバカはどこにでもいるのでやむえないとしても、問題は日本のフロイトラカン研究者でチバのおバカぶりをまともに指摘しているヤツが(私の知る限り)ひとりもいないことだ。とくにチバと友人関係にあるらしい松本卓也くんは、なにやってんだろ? まさかこの程度のことは知らないはずはないだろうから、たぶんうわさのコウモリやってんのかな。
私はこのたぐいのことをあまり書きたくないので、厳密にフロイトラカンに基づいての反論がある以外は、もう返事しないよ。感想文的反論は無視させていただく。