ひとりの女は悪である。なぜならひとりの女はトラウマ「une femme est le traumatisme]だから。 |
ひとりの女は異者である[une femme …c'est une étrangeté. ](Lacan, S25, 11 Avril 1978) |
トラウマないしはトラウマの記憶は、異者 (異者としての身体[Fremdkörper] )のように作用する。この異物は体内への侵入から長時間たった後も、現在的に作用する因子として効果を持つ。das psychische Trauma, respektive die Erinnerung an dasselbe, nach Art eines Fremdkörpers wirkt, welcher noch lange nach seinem Eindringen als gegenwärtig wirkendes Agens gelten muß(フロイト&ブロイアー 『ヒステリー研究』予備報告、1893年) |
トラウマの別名は穴である。 |
現実界は穴=トラウマを為す[le Réel …fait « troumatisme ».](ラカン、S21、19 Février 1974) |
すなわち、ひとりの女は穴である「une femme est le trou]。穴とは引力の起源、ブラックホールであり、したがってあらゆる災いは女から生じる。 |
女はその本質からして蛇であり、イヴである Das Weib ist seinem Wesen nach Schlange, Heva」――したがって「世界におけるあらゆる禍いは女から生ずる vom Weib kommt jedes Unheil in der Welt」(ニーチェ『アンチクリスト』1888年) |
ひとりの女は対象aである。 |
ひとりの女は異者である[une femme …c'est une étrangeté. ](Lacan, S25, 11 Avril 1978) |
異者としての身体…問題となっている対象aは、まったき異者である[corps étranger,…le (a) dont il s'agit,…absolument étranger] (Lacan, S10, 30 Janvier 1963) |
対象aは穴である[l'objet(a), c'est le trou] (Lacan, S16, 27 Novembre 1968) |
ひとりの女はわれわれすべての人間にトラウマ的リビドーの固着を成したのである。 |
対象aはリビドーの固着点に現れる[petit(a) …apparaît que les points de fixation de la libido ](Lacan, S10, 26 Juin 1963) |
つまり、ひとりの女はわれわれ身体の上に不変の個性刻印[unwandelbare Charakterzüge]を刻んだのである。 |
トラウマは自己身体の出来事もしくは感覚知覚である。〔・・・〕このトラウマの作用は、トラウマへの固着と反復強迫の名の下に要約される。それは、標準的自我と呼ばれるもののなかに含まれ、絶え間ない同一の傾向をもっており、不変の個性刻印と呼びうる。Die Traumen sind entweder Erlebnisse am eigenen Körper oder Sinneswahrnehmungen, […] Man faßt diese Bemühungen zusammen als Fixierung an das Trauma und als Wiederholungszwang. Sie können in das sog. normale Ich aufgenommen werden und als ständige Tendenzen desselben ihm unwandelbare Charakterzüge verleihen (フロイト『モーセと一神教』「3.1.3 Die Analogie」1939年) |
この刻印が永遠回帰の徴である。 |
同一の出来事の反復の中に現れる不変の個性刻印[gleichbleibenden Charakterzug]を見出すならば、われわれは同一のものの永遠回帰[ewige Wiederkehr des Gleichen]をさして不思議とも思わない。〔・・・〕この反復強迫[Wiederholungszwang]〔・・・〕あるいは運命強迫 [Schicksalszwang nennen könnte ]とも名づけることができるようなものについては、合理的な考察によって解明できる点が多い。(フロイト『快原理の彼岸』第3章、1920年) |
そう、ひとりの女による刻印こそ、死の欲動の徴である。 |
われわれは反復強迫の特徴に、何よりもまず死の欲動を見出だす[Charakter eines Wiederholungszwanges […] der uns zuerst zur Aufspürung der Todestriebe führte.](フロイト『快原理の彼岸』第6章、1920年) |