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 ボオドレエルは白痴になつた後、彼の人生観をたつた一語に、――女陰の一語に表白した。しかし彼自身を語るものは必しもかう言つたことではない。寧ろ彼の天才に、――彼の生活を維持するに足る詩的天才に信頼した為に胃袋の一語を忘れたことである。(芥川龍之介「河童」)  | 
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 破壊 ボードレール 絶え間なく俺の傍を馳せ廻る悪魔が 触れえない空気のように纏わりつく 飲みこむやいなや俺の肺を糜爛させ 永劫なる背徳の欲望を滾々とさせる  | 
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 俺が殊更美を愛するのを知って 女の最も蠱惑の姿態をとり 欺瞞のもっともらしい口実で 俺の唇に忌わしい媚薬を擦りつける 悪魔は神の眼差しを遠ざけて 息を切らして喘ぐ俺を導き 奈落と倦怠の荒野へと連れてゆく  | 
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 そうして惑乱した俺の瞳の中に 擦り切れた衣装 開かれた傷口 血塗れの破壊の仕掛を投げ込む  | 
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 La Destruction Sans cesse à mes côtés s'agite le Démon; Parfois il prend, sachant mon grand amour de l'Art, II me conduit ainsi, loin du regard de Dieu, Et jette dans mes yeux pleins de confusion ― Charles Baudelaire 
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