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2022年1月15日土曜日

女が孕んで歌っている姿はなんという美しさだろう

 バッハBWV21「私は憂いに沈む(Ich hatte viel Bekümmernis)」のソプラノアリア「歎き涙憂い悩み(Seufzer, Tränen, Kummer, Not)」をお腹の大きな可憐な乙女が歌っている。


彼女はドイツのマリー・ルイーゼ・ヴェルネブルクMarie Luise Werneburg という方で、いま売れっ子になりつつあるようだ。もともとこういうお腹のひとではけっしてなく、2021年年6月のお腹は、4ヶ月前の2021年月にはふつうのお腹でBWV127の「魂はイエスの手にて憩う(Die Seele ruht in Jesu Händen)」を歌っている。



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BWV21

Marie Luise Werneburg 

19.06.2021

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BWV127

Februar 2021




女が孕んで歌っている姿はなんという美しさだろう。



女が孕んで、立っている姿は、なんという憂愁にみちた美しさであったろう。ほっそりとした両手をのせて、それとは気づかずにかばっている大きな胎内には、二つの実が宿っていた、嬰児と死が。広々とした顔にただようこまやかな、ほとんど豊潤な微笑は、女が胎内で子供と死とが成長していることをときどき感じたからではないか。


Und was gab das den Frauen für eine wehmütige Schönheit, wenn sie schwanger waren und standen, und in ihrem großen Leib, auf welchem die schmalen Hände unwillkürlich liegen blieben, waren zwei Früchte: ein Kind und ein Tod.  Kam das dichte, beinah nahrhafte Lächeln in ihrem ganz ausgeräumten Gesicht nicht davon her, daß sie manchmal meinten, es wüchsen beide? (リルケ『マルテの手記』1910年)