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2022年5月18日水曜日

不気味なものは穴の名/ファルスは欠如の名


間違っているんだよ、それ」で記した不気味なものは現実界の話は別の仕方で示せば次の三文でよいんだよ。


フロイトのモノを私は現実界と呼ぶ[La Chose freudienne … ce que j'appelle le Réel ](ラカン, S23, 13 Avril 1976)

モノの概念、それは異者としてのモノである[La notion de ce Ding, de ce Ding comme fremde, comme étranger,](Lacan, S7, 09  Décembre  1959)

異者がいる。…異者とは、厳密にフロイトの意味での不気味なものである[Il est étrange… étrange au sens proprement freudien : unheimlich] (Lacan, S22, 19 Novembre 1974)


「モノ=異者=不気味なもの」は現実界の名だ。


そして享楽は現実界。剰余享楽ではなく本来の享楽は。


享楽は現実界にある…現実界の享楽である[la jouissance c'est du Réel.  …Jouissance du réel] (Lacan, S23, 10 Février 1976)


したがってモノは享楽の名、異者は享楽の名。


モノは享楽の名である[das Ding… est tout de même un nom de la jouissance](J.-A. MILLER, Choses de finesse en psychanalyse XX, 10 juin 2009)

現実界のなかの異者概念は明瞭に、享楽と結びついた最も深淵な地位にある[une idée de l'objet étrange dans le réel. C'est évidemment son statut le plus profond en tant que lié à la jouissance ](J.-A. MILLER, Orientation lacanienne III, 6  -16/06/2004)


つまり、「不気味なものは享楽の名」だ。


現実界の享楽は穴の名(トラウマの名)でもある。


享楽は穴として示される他ない[la jouissance ne s'indiquant là que …comme trou ](ラカン, Radiophonie, AE434, 1970)

現実界は穴=トラウマをなす[le Réel …ça fait « troumatisme ».](Lacan, S21, 19 Février 1974)

問題となっている現実界は、一般的にトラウマと呼ばれるものの価値を持っている[le Réel en question, a la valeur de ce qu'on appelle généralement un traumatisme.  ](Lacan, S23, 13 Avril 1976)


つまり「不気味なものは穴の名」だ。


他方、ファルスは欠如の名だ。

ファルスというのは象徴的去勢ーー言語を使用することによる身体的なものの喪失ーなのであって、これを欠如というんだよ。

ファルスはそれ自体、主体において示される欠如の印以外の何ものでもない[  (le) phallus lui-même … n'est rien d'autre que ce point de manque qu'il indique dans le sujet. ](Lacan, LA SCIENCE ET LA VÉRITÉ, E877, 1965)


古典的なはなしだよ、何もラカンの専売特許じゃない。


象徴システムにおいて、このシステムが機能するための構造的に決定づけられた開口部や欠如の必要性は、ゲーデルの不完全性定理によって論理的に明証された。


この同じ必要性を明示するためのより簡潔な方法は、玩具、いわゆるスライディングブロックパズルを通して獲得しうる。人がブロックを正しく並べかえたいのなら、それらをグルリと移動させなければならない。移動させるためには、開口部、すなわち一つの要素が欠如している空隙が必要である。さもなければ、全ては文字通りかつ比喩的にも立ち往生する。欠如と移動の可能性(換喩を想起しよう)はどの象徴システムにおいても本質的な特徴である。(PAUL VERHAEGHE, A Radical Reconsideration of the Oedipus Complex, 2009)






欠如とは、場のなかに刻まれた不在を意味する。欠如は場の秩序に従う。場は、欠如によって影響を受けない。この理由で、まさに他の諸要素が、ある要素の《欠如している》場を占めることができる。人は置換することができるのである。置換とは、欠如が機能していることを意味する。

Le manque veut dire une absence qui s'inscrit à une place, c'est-à-dire que les places sont intouchées par le manque Le manque au contraire obéit à l'ordre des places Et c'est bien ce qui fait que d'autres termes peuvent s'inscrire à la place où tel terme « manque », par rapport à quoi, grâce à quoi on obtient une permutation La permutation veut dire que le manque est fonctionnel.  (J.-A. Miller, LE LIEU ET LE LIEN, 6 juin 2001)


繰り返せば、
不気味なものは穴の名である一方で、ファルスは欠如の名だ。より詳しくは欠如と穴(外立)を見よ。