ここで私は、フロイトのテキストにおける「唯一の徴 trait unaire(einziger Zug)」の機能を借り受けよう。すなわち徴の最も単純な形態、シニフィアンの起源である。分析家を関心づけるすべては、唯一の徴にある。j'emprunte pour lui donner …dans le texte de FREUD …la fonction du trait unaire, c'est-à-dire de la forme la plus simple de marque, c'est-à-dire ce qui est, à proprement parler, l'origine du signifiant. …c'est que c'est du trait unaire que prend son origine tout ce qui nous intéresse, nous analystes, (Lacan, S17, 14 Janvier 1970) |
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地球BBQの唯一の徴と集団ヒステリー |
フロイトの『集団心理学と自我の分析』より |
◼️エディプスコンプレクスからくる同一化 |
やや複雑な関係の中から、神経症の症状形成における同一化[die Identifizierung bei einer neurotischen Symptombildung]をとり出してみよう。いまここでは、幼い少女を例にとってみようとおもうが、彼女は母親とおなじ苦痛な症状、たとえば母親とおなじような苦しげな咳に悩んでいる。この症状は、さまざまな起こり方をする。この同一化はエディプスコンプレクスから来ることもありうる[Entweder ist die Identifizierung dieselbe aus dem Ödipuskomplex]。この事例では、同一化は母の場を占めようとする少女における敵意[ein feindseliges Ersetzenwollen der Mutter]を示す。そしてこの症状は父への対象愛[die Objektliebe zum Vater]を表現している。この症状は、少女の罪意識の下にある母の代理物の実現である[es realisiert die Ersetzung der Mutter unter dem Einfluß des Schuldbewußtseins]。つまり「お前は母親になろうと思った以上、今はせめて苦しむのだ」と。これはヒステリー症状形成の完璧なメカニズム[der komplette Mechanismus der hysterischen Symptombildung]である。 |
◼️愛している人との同一化 |
また一方で、その症状は愛している人の症状と同じ場合もある。例えば「あるヒステリーの分析の断片』の事例では、ドラは父親の咳を真似た[Dora im ›Bruchstück einer Hysterie-Analyse‹ den Husten des Vaters imitiert]。そこでわれわれは、この間の事情を次のように述べることができよう。 同一化は対象選択のかわりに現われ、対象選択は同一化に退行したと[die Identifizierung sei an Stelle der Objektwahl getreten, die Objektwahl sei zur Identifizierung regrediert. ]。 |
同一化は感情結合のもっとも初期のもっとも根源的な形式である。症状形成の条件の下、つまり抑圧と無意識のメカニズムの支配の下では、対象選択が同一化に退却する、つまり自我は対象の特性を身につける[die Objektwahl wieder zur Identifizierung wird, also das Ich die Eigenschaften des Objektes an sich nimmt]ことはしばしば起こる。 |
◼️好まない人物との同一化 |
同一化において、自我がときに好まない人物を模倣したり、ときに愛している人物を模倣することも注目に値する。どちらの場合も同一化は部分的で極度に限定されたものであり、対象人物のたった一つの特徴(唯一の徴[einen einzigen Zug])を借りていることもわれわれを驚かす。 Bemerkenswert ist es, daß das Ich bei diesen Identifizierungen das eine Mal die ungeliebte, das andere Mal aber die geliebte Person kopiert. Es muß uns auch auffallen, daß beide Male die Identifizierung eine partielle, höchst beschränkte ist, nur einen einzigen Zug von der Objektperson entlehnt. |
◼️同じ状態に身を置こうとする同一化(集団ヒステリー) |
症状形成の第三の、とくにひんぱんで重要な実例は、同一化が模倣した人物との対象関係をまったく度外視する場合である。たとえば寄宿舎の一人の少女が秘密の恋人から手紙を受けとり、その手紙が彼女の嫉妬を刺激した結果、ヒステリーの発作で反応するとき、それを知った彼女の二、三の女友達は、いわば心理的伝染[psychischen Infektion]によっておなじ発作を起こすだろう。このメカニズムは、おなじ状態に身を置く能力、または置こうとする欲求にもとづく同一化の機制である[Der Mechanismus ist der der Identifizierung auf Grund des sich in dieselbe Lage Versetzenkönnens oder Versetzenwollens. ]。その女友達たちも秘密の恋愛関係をもちたいとおもい、罪意識の中で、その恋愛につきまとう苦悩をも引き受けるのである。 |
彼女たちは同情からその症状を自分たちのものにしているのだ、と主張することは正しくないだろう。その反対に、同情は同一化によって生まれる[das Mitgefühl entsteht erst aus der Identifizierung]。その証拠に、このような伝染ないし模倣は、寄宿生の場合よりも、相互のあいだた、ずっとわずかしか一時の共感があるにすぎない事情の中でも行なわれるからである。 |
一人の自我が、他人の自我にある点で重要な類似をみつけたとき、われわれの例でいえば、同様な感情を用意している点で意味ふかい類似をみとめたとき、それにつづいてこの点で同一化が形成される。 そして、病理的状況の影響下では、この同一化は、一人の自我が創りだした症状に置き換えられる。このようにして、症状を通しての同一化は、二人の自我の重複点にとっての徴[Anzeichen für eine Deckungsstelle der beiden Ich]となるが、この重複点は抑圧されていなければならないものである。 |
◼️まとめ |
われわれは、この三つの源泉から学んだことを、次のように要約することができよう。 第一に、同一化は対象にたいする感情結合の根源的な形式である[daß erstens die Identifizierung die ursprünglichste Form der Gefühlsbindung an ein Objekt ist]。 第二に、退行の道をたどって、同一化は、いわば対象を自我に取り入れることによって、リビドー的対象結合の代理物になる[zweitens, daß sie auf regressivem Wege zum Ersatz für eine libidinöse Objektbindung wird, gleichsam durch Introjektion des Objekts ins Ich]。 第三に、同一化は性欲動の対象ではない他人との、あらたにみつけた共通点のあるたびごとに生じる。この共通性が、重大なものであればあるほど、この部分的な同一化は、ますます効果のあるものになり、それは新たな結合の端緒を表すようになる[und daß sie drittens bei jeder neu wahrgenommenen Gemeinsamkeit mit einer Person, die nicht Objekt der Sexualtriebe ist, entstehen kann. Je bedeutsamer diese Gemeinsamkeit ist, desto erfolgreicher muß diese partielle Identifizierung werden können und so dem Anfang einer neuen Bindung entsprechen ]。(フロイト『集団心理学と自我の分析』第7章、1921年) |