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2022年6月27日月曜日

「アメリカによる、ロシア弱体化のための戦争」(伊藤貫)

 この伊藤貫氏の定義ははっきりしていて実に好ましい、今回の戦争は「ロシアとウクライナの戦争」ではなく、事実上、「東西冷戦終了後も執拗に世界覇権の掌握を目指してきたアメリカによる、ロシア弱体化のための戦争」であるという捉え方は。


三十年間、ロシアを弄んできたアメリカ

ロシアを戦わざるをえない状況に追い込んだのはアメリカだ。その経緯をアメリカ側証言から読み解く。

伊藤貫『表現者クライテリオン』2022年7月号

ついに米露戦争が始まった。この戦争は西側諸国のマスコミでは、「ロシアとウクライナの戦争」と報道されている。しかし今回の戦争の本質は、「東西冷戦終了後も執拗に世界覇権の掌握を目指してきたアメリカによる、ロシア弱体化のための戦争」である。〔・・・〕


筆者は、シカゴ大学の国際政治学者ジョン・ミアシャイマーやプリンストン大学のロシア史学者スティーヴ・コーエン(一年半前に死去)と同様、「最近の米露関係悪化の原因の大部分は、冷戦終了後のアメリカの対露政策にある」と考えている。本稿では、米政府の対露政策の企画と実施に参加した国務省やCIAの高官の証言を引用しながら、「最近のアメリカ政府が、どのようにロシア国民を弄び、搾取し、裏切ってきたか」という経緯を解説したい。


冷戦終了時の美辞麗句、その後の裏切り


最近三十年間の米露関係悪化の最も重要な原因は、二つである。それらは、①米政府が、「我々はNATOを拡大しない。我々はロシア封じ込め政策を採用しない」という約束を破棄したこと。 ② 米政府と米金融業者が、「ロシアの経済改革に協力したい」という美しい名目の下に実行した、ロシア経済資源の巨大な窃盗行為。 アメリカのこれら二つの行為は、ソ連帝国の崩壊によって窮乏化していたロシア国民に対するショッキングな裏切りであった。(米国において、このようなアメリカ政府による裏切り行為を真正面から批判したのは、ミアシャイマー、コーエン、ケナン、ハンティントン、ケネス・ウォルツ等、少数の知識人だけであった。 アメリカの圧倒的多数の言論人・マスコミ機関・学者・シンクタンクは、この深刻なロシアに対する裏切り行為に関して沈黙したままであった。したがって米国民のほとんどは、米政府による「二つの裏切り行為」に関して完全に無知である。このことに関して、世界的に著名な言語学者であるノーム・チョムスキーは、「ロシア資産の窃盗に参加した米国のエリート・グループが、アメリカのマスメディアと政治システムを支配している。一般国民は、無知な状態に置かれている。現在のアメリカには、真の『言論の自由』が存在しない」とコメントしている。)……





直近の【伊藤貫の真剣な雑談】第7回「文明の衝突とロシア国家哲学」[桜R4/6/25]のYouTube動画のほうでは、今回の戦争は1990年以降のアメリカが起こしてきた数々の戦争とはわけが違って、《ウクライナでのアメリカとロシアの戦争は、国際政治の根本を変えてしまう》ともある。《2030年代になっても云々》とも言っており、要するに10年後にこの現在の戦争を振り返れば、いかに世界の構造を変貌させた出来事かがわかるだろうということだ。何はともあれ、伊藤貫曰く《ウクライナ戦争は米国が仕掛けた》のだと。


そしてもう一度強調すれば、ウクライナとロシアの戦争ではなく「ウクライナでのアメリカとロシアの戦争」という伊藤貫の観点であり、これが今回の戦争が「代理戦争」だという内実である。キエフ政権の軍隊は将棋の駒に過ぎない。これはもう誰もが認めなくてはならないのではないか。