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2022年8月23日火曜日

官産複合体なる闇の国家

 



私はすでに3人のアメリカ大統領と接してきた。大統領は入れ替わるが、政治はいつも同じだ。なぜか? 官僚機構が強大だから。大統領が選ばれたとき、彼らは何かアイデアを持っているかもしれない。そして、ブリーフケースを持った人たちが、身だしなみよく、私と同じようなダークスーツを着てやってくる。赤いネクタイを除いてだが、彼らは黒か濃紺のものを好むようだから。この人たちは、物事がどのように行われるかを説明し始める。すると、たちまちすべてが変わってしまう。これは、どの政権でも起こることだ。(プーチンインタビュー、フィガロ 2017/05/29

I have already spoken to three US Presidents. They come and go, but politics stay the same at all times. Do you know why? Because of the powerful bureaucracy. When a person is elected, they may have some ideas. Then people with briefcases arrive, well dressed, wearing dark suits, just like mine, except for the red tie, since they wear black or dark blue ones. These people start explaining how things are done. And instantly, everything changes. This is what happens with every administration. Vladimir Putin's interview with Le Figaro. recorded on May 29 2017



ーーだな、これがアメリカという国だ。



米国のディープステート(闇の国家)の悪などと言われるが、その内実はシンプルに官僚支配ということであり、官産複合体ーー軍産複合体やら医産複合体やらーーとは、G -W - G '(G + ⊿ G)に最も強力に支配されているということだ。


マルクスの G -W - G '(G + ⊿ G)とは、G(貨幣) - W(商品) - G '(貨幣G+剰余価値⊿ G )であり、ここにすべての資本の欲動(資本の駆り立てる力)の核がある。


この過程の全形態は、G -W - G 'である。G' = G + ⊿ G であり、最初の額が増大したもの、増加分が加算されたものである。この、最初の価値を越える、増加分または過剰分を、私は"剰余価値"[Mehrwert (surplus value)]と呼ぶ。この独特な経過で増大した価値は、流通内において、存続するばかりでなく、その価値を変貌させ、剰余価値または自己増殖を加える。この運動こそ、貨幣の資本への変換である。

Die vollständige Form dieses Prozesses ist daher G -W - G', wo G' = G+⊿G, d.h. gleich der ursprünglich vorgeschossenen Geldsumme plus einem Inkrement. Dieses Inkrement oder den Überschuß über den ursprünglichen Wert nenne ich - Mehrwert (surplus value). Der ursprünglich vorgeschoßne Wert erhält sich daher nicht nur in der Zirkulation, sondern in ihr verändert er seine Wertgröße, setzt einen Mehrwert zu oder verwertet sich. Und diese Bewegung verwandelt ihn in Kapital. (マルクス『資本論』第一篇第二章第一節「資本の一般的形態 Die allgemeine Formel des Kapitals」)



例えば軍産複合体であれば、G -W - G '(G + ⊿ G)とは「貨幣 - 武器 - 貨幣プラス剰余価値」であり、医産複合体であるなら、武器の項目にワクチンなる「生物兵器」が代入される。そろそろ食産複合体も以前よりいっそう前面に出て「食物兵器」の悪が話題になることだろう。


真ん中の商品Wの項は何でもよいのである、剰余価値⊿ Gさえ獲得できれば。したがってマルクスは最終的にはG - G′と記すようになる、銀行や株主資本に支配された「資本 - 資本プラス剰余価値」である。ここでの剰余価値の別名が資本フェティッシュ[Kapitalfetisch]である。


利子生み資本では、自動的フェティッシュ[automatische Fetisch]、自己増殖する価値 、貨幣を生む貨幣[selbst verwertende Wert, Geld heckendes Geld]が完成されている。〔・・・〕

ここでは資本のフェティッシュな姿態[Fetischgestalt] と資本フェティッシュ [Kapitalfetisch]の表象が完成している。我々が G - G′ で持つのは、資本の中身なき形態 [die begriffslose Form des Kapitals]、生産諸関係の至高の倒錯と物件化[Verkehrung und Versachlichung]、すなわち、利子生み姿態・再生産過程に先立つ資本の単純な姿態である。それは、貨幣または商品が再生産と独立して、それ自身の価値を増殖する力能[Fähigkeit des Geldes, resp. der Ware, ihren eignen Wert zu verwerten, unabhängig von der Reproduktion]ーー最もまばゆい形態での資本の神秘化[Kapitalmystifikation]である。(マルクス『資本論』第三巻第二十四節 )


官産複合体なる闇の国家とは、実際はシンプルに「資本フェティッシュ」の神秘の奴隷になった国家ということに他ならない。


もっともこの官産複合体は何も米国だけに限らず、世界資本主義という釈迦の掌の上にのって活動するすべての国家は免れることは事実上できない。さらに言えばすべての人間も。市場原理主義の社会に生きるわれわれは、実際は「人産複合体」なのである。


マルクスは間違っていたなどという主張を耳にする時、私には人が何を言いたいのか理解できない。マルクスは終わったなどと聞く時はなおさらだ。現在急を要する仕事は、世界市場とは何なのか、その変化は何なのかを分析することである。そのためにはマルクスにもう一度立ち返らなければならない。(ドゥルーズ「思い出すこと」死の2年前のインタビュー、1993年)