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2022年10月13日木曜日

グッと惚れたインテルメッツォ

 

・・・しかしグールドにあってわたしが一番好きなのはバッハではない。好きなのはブラームスの演奏だ。〈間奏曲〉、ほかにピアノ協奏曲ニ短調がとくに好きだ。驚くほどに音が遠くにある感じが好きだ。夕暮れの苦い樹皮、最期の苦痛(しかしながら、あのときのグールドは若かった)、とぎすまされていて呆然とさせる境界線の接近。そのたたずまいに感じられる果てしない悲しみ。記憶が音楽に変わるのか、それとも音楽が記憶に変わるのか判然としないままだ。

死なずに生きつづけるものとして音楽を聞くのがわたしは好きだ。音が遠くからやってくればくるほど、音は近くからわたしに触れる。……(ミシェル・シュネデール『グレン・グールド ピアノソロ』最終章「アリア」)


…………

ブラームスの間奏曲はグールドの途轍もない名演の録音がある。


Glenn Gould, Brahms - 10 Intermezzi


とはいえ、それはこの際置いておいて(?)、つまりグールドだけじゃないな、というのは、YouTube で他の演奏家のものを拾い出してからだね。


ごく最近、グッと惚れたのはアニー・フィッシャーのものだね、顔に惚れたよ。とっても美人なんだ。




Annie Fischer - Brahms: Intermezzo in E Major Op. 116, No. 4 (1976)


ーー実に静謐な演奏だなあ、彼女はもともとベートーヴェン弾きで、とくにop109は絶品なんだけど。


ロシア組のリヒテルとエリソ・ヴィルサラーゼの二人のop119もとってもいいなあ。とくにリヒテルのなんか世界の向こうの扉の開いてそこかからやってくるようなとんでもない音だなあ


Richter plays Brahms intermezzo Op 119 No 1

Eliso Virsaladze plays Brahms: 4 Klavierstücke, Op. 119 (live, 1991)


リヒテルはエリソ・ヴィルサラーゼのシューマンを絶賛しておりーー「あなたは最高のシューマン弾きだ!」と言ったそうだーー、とはいえ今のところボクの趣味にあう演奏には行き当たっていないね、ちょっと重すぎるんだ、でも彼女のブラームスop119の一曲目にはとっても惚れたね、


アニー・フィッシャーと同じハンガリー組のシフの間奏曲もいいなあ、


András Schiff Brahms Intermezzo in A major op.118 no.2 

András Schiff - Brahms, Intermezzi Op. 117


グールドの演奏よりいくらか速いんだが、op118 no.2とOp117のこれまた二曲目の刻み込んだような音にはゾッコンになっちまったなあ。


世界にはいろんなピアニストがいすぎてよくないねえ。いったん聴きだすと、他のことはどうでもよくなっちまうよ


10 pianists in comparison - Brahms, Intermezzo Op. 117 N°2 (1950-2012)



なんだ、この冒頭のシューラ・チェルカスキーShura Cherkasskyの演奏って。ボコっと殴られた感じだよ、目眩がするなあ、死ぬなあ。全然知らない名だけど、ウクライナオデッサ出身でロシア革命で家族とともに米国亡命系らしい。