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2022年11月4日金曜日

消費税30%付きの「令和の徳政令」

 

例えば、小黒一正氏がきわめて単純化した図を示している(「年金改革」)。




小黒氏の意図は日本の年金を賦課方式から積み立て方式に徐々に変更する(最終的には100年ぐらいかけて)というもので、その文脈でのこの図だが、ここでは純粋に「高齢者1人当たりの生産人口」図として使う。年金300万円とは実績からはいくらか多すぎる設定だが、高齢者医療費も含めての300万円としたらむしろ少なすぎる設定であり、今後医療費が多くかかる75歳以上人口が増えていく事態からみれば、いっそう多くなるが(インフレを念頭に入れずとも)、ここではそれを考慮せず将来的にも仮に300万円と設定して話をする。


少し前、令和4年版高齢社会白書からの次の図を掲げた。





「65歳以上人口を15〜64歳人口で支える割合」に関するデータを10年毎に抜き出せば、こうなる。



次に2000年から20年毎に図示すれば、次の通り。



少子高齢化への移行は将来の問題というより、既にこの今の大問題であり、2000年から2020年のあいだに「65歳以上人口を15〜64歳人口で支える割合」が半減しているのがわかる。高齢者への仕送りが300万円なら、2000年には生産年齢人口1人当たり75万円の仕送りで済んでいたところ、2020年には1人当たり150万円ほどの負担しなくてはならない。もちろんそんな高額の負担はできないから、国債発行等で穴埋めする。


ピケティは日本の借金がまだカワイイ頃、既にこう言っている。


われわれは日本の政府債務をGDP比や絶対額で毎日のように目にして驚いているのだが、これらは日本人にとって何の意味も持たないのか、それとも数字が発表されるたびに、みな大急ぎで目を逸らしてしまうのだろうか。

Tous ces chiffres exprimés en pourcentages de PIB ou en milliers de milliards - dont on nous abreuve quotidiennement - ont-ils un sens, ou bien doit-on tourner la page dès qu’ils réapparaissent ? (トム・ピケティ『新・資本論』2011年ーーJapon : richesse privée, dettes publiques Par Thomas Piketty avril 2011)




歳出増のほとんどは社会保障給付費である。




というわけで、日本は世界に冠たる借金国となってしまった(財務省令和4年10月)。




要するに日本はもうどうしようもないところまで来ているので、事実上、解決策なんかない。ハイパーインフレ起こして借金を帳消しするぐらいしかない。あるいは近未来の「令和の徳政令」を。

最悪の事態を避けるためには、政府が“平成の徳政令”を出して国の借金を一気に減らすしかないと思う。具体的な方法は、価値が半分の新貨幣の発行である。今の1万円が5000円になるわけだ。


そうすれば、1700兆円の個人金融資産が半分の850兆円になるので、パクった850兆円を国の借金1053兆円から差し引くと、残りは200兆円に圧縮される。200兆円はGDPの40%だから、デフォルトの恐れはなくなる。そこから“生まれ変わって”仕切り直すしか、この国の財政を健全化する手立てはないと思うのである。


その場合、徳政令はある日突然、出さねばならない。そして徳政令を出した瞬間に、1週間程度の預金封鎖を発動しなければならない。そうしないと、日本中の金融機関で取り付け騒ぎが起きてしまうからだ。(大前研一「財政破綻を避けるには「平成の徳政令」を出すしかない」2016.11)



でもそうしてももちろん高齢化比率は残る。あるべき姿は借金帳消しとともに消費税30%付きの徳政令だね。30%とは実は遠慮した数字で、またしても借金雪だるまにならないためには40%ほど欲しいけどな。


この消費税30%超えとは、10年に一度の財務次官と言われた武藤敏郎氏が次の改革案を示しつつ既に言っていることである。




ここで消費税率 25%とは、かなり控えめにみた税率である。①医療や介護の物価は一般物価よりも上昇率が高いこと、②医療の高度化によって医療需要は実質的に拡大するトレンドを持つこと、③介護サービスの供給不足を解消するために介護報酬の引上げが求められる可能性が高いこと、④高い消費税率になれば軽減税率が導入される可能性があること、⑤社会保険料の増嵩を少しでも避けるために財源を保険料から税にシフトさせる公算が大きいこと――などの諸点を考慮すると、消費税率は早い段階でゆうに 30%を超えることになるだろう。 (超高齢日本の 30 年展望 持続可能な社会保障システムを目指し挑戦する日本―未来への責任 大和総研理事長 武藤敏郎 監修 調査本部 、2013 年 5 月 14 日)




何はともあれーーどんなに楽観的な将来像を描いてもーー、日本という国は中福祉高負担しかない。それが人口動態の避けられない帰結である。


日本の場合、低福祉・低負担や高福祉・高負担という選択肢はなく、中福祉・高負担しかありえないことです。それに異論があるなら、 公的保険を小さくして自己負担を増やしていくか、産業化するといった全く違う発想が必要になるでしょう。(財政と社会保障 ~私たちはどのような国家像を目指すのか~ 大和総研理事長武藤敏郎、 2017年1月18日)

日本経済の主な問題はデフレではなく、人口動態である[The main problem in the Japanese economy is not deflation, it's demographics] (白川方明前日銀総裁 Masaaki Shirakawa, at the Tuck School of Business at Dartmouth College, 2014.05.13)



もはや中福祉高負担どころか、《「低福祉、高負担」への転換を余儀なくされることとなりかねない》(令和2年度予算の編成等に関する建議、令和元年 11 月 25 日)という話さえ出ており、これが近未来の実態でありうる。