ヒト族はもともと洗脳の歴史の主体だよ。
最初は、つまり出生後の母子二者関係において、母は母乳を授けたり幼児の身体から湧き起こる不快をなだめるために、子供の身体の上に刻印をする。幼児側からいえば、母を取り入れる。この取り入れ[Introjektion」をフロイトは、前エディプス期における母との同一化[Mutteridentifizierung]、あるいは母への固着[Fixierung an die Mutter]と言った。これは洗脳というより「洗躰」というべきかも知れないが、世話役としての母(ときに母の代役としての子守り)に間違いなく支配される。ラカンはこの母を全能の原大他者[l'omnipotence dans l'Autre primitif]と言ったり、母なる超自我[surmoi maternel]とした(もともとフロイトにおいても原超自我は母だが)。
次に母子二者関係に介入する第三者が現れる。通常は父だが、場合によっては祖母祖父などでもよい。この第三者が父への同一化[Vateridentifizierung]としての父の名の大他者だが、女としての祖母や姉でも父の名の機能を果たす。一般的には、原大他者としての母は「身体の大他者」、二番目の大他者は「言語の大他者」として形式化されている。後者の父の名としての大他者からは、子供は厳密に洗脳を受ける(もっとも倒錯者は母との同一化にとどまり、父なる大他者を馬鹿にする性癖をもつ傾向がある)。
その後、この言語の大他者の役割を引き継ぐのが、教師であったり書物であったりする。学ぶことは、言語の大他者を取り入れことであり、間違いなく洗脳だよ。大学に入って、場合によってはガチガチに洗脳され、それをそのまま引き摺りつつ大学教師になる連中が出てくるが、ある意味で、学生に最も強力な洗脳を授ける者が大学教師だとさえ言える。この内実はラカンの大学人の言説に現れており、ドクマを隠蔽しつつ中立を装った教師は生徒に知識を授けるという図式だ。
このようにして、小林秀雄=菊池寛曰くの「世の中で一番始末に悪い馬鹿、背景に学問も持った馬鹿」のシステム形式化が示される。この「世の中で一番始末に悪い馬鹿」があからさまに跳梁跋扈したのが、この二年におけるコロナワクチン騒動での医師やウクライナ紛争での国際政治学者だね。
いまや洗脳度が低い、あるいは不真面目にしか勉強してこなかったボクやキミらの出番なんだけどな。頑張れよ、もっと。おい、わかるか?