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2022年11月3日木曜日

グールドはグールドについてグールドにインタビューする

 

◼️「グレン・グールドはグレン・グールドについてグレン・グールドにインタビューする」より

"Glenn Gould Interviews Glenn Gould about Glenn Gould."  High Fidelity Magazine 24 (February 1974)


gg  ではと、まず伺いたいのはですね、あなたが他人について美的評価を云々しないとすると、あなた自身の仕事に関して美的評価を下す人たちについてはどう思われます?


GG  ええ、私の親友の中には批評家もいますよ。でもそのうち一人でも私のピアノについて書いてほしい人間がいるかというと、自信はありませんがね。


gg   しかしついさっき、美的評価を中止した状態を、"精神的完成"と結びつけて語られたではありませんか。


GG  精神的完成度の基準が、そういう評価の中止だけで構成されるという印象は与えたくなかったのですが。


gg  それはわかります。しかし批判精神というのは否応なく道徳的には堕落した状態につながる、というのがあなたの見解と見なしてもよろしいでしょうか。


GG   そうですねえ、そう言ってしまってはずいぶん僭越な判断を下すことになります。さきほど言ったように、親友の中には、その――


gg  批評家もいるからというわけですね。でも、あなたは私の質問を避けていらっしゃる。


GG  故意にではありませんよ。ただ十把ひとからげに言ってしまっては、誉れ高い方々の名前に疵をつけることになると思って、それでーー


gg  グールドさん、私たち二人のために、そして、読者のためにも、質問にお答えになるべきですよ。


GG  そうですかね?


gg    確信を持って言えますね。質問をもう一度繰り返しましょうか?


GG   いや、その必要はありません。


gg   つまり、実際、批評家は道徳的には堕落した人種であると感じられているわけですね?


GG  そのう、"堕落した"という言葉の意味するところはーー


gg   どうかグールドさん、質問にお答えください。そう思っていらっしゃるのでしょう?


GG  えーと、前にも言ったように、私はーー


gg    そう思うんでしょ?


GG  (間を置いて)ええ。


gg    当然そうでしょうとも。それについて告白したいこともきっとおありでしょう。


GG  うーん、今はいやですね。


gg   でもそのうちになさいますよ。


GG   本当にそう思います?


gg    絶対ですね。……