しかし我々に対するヨーロッパのこの憎悪はそもそも何によるのだろうか? ヨーロッパがなんとしても永遠に我々を信頼することが出来ないのはなぜだろうか?(ドストエフスキー『作家の日記』1881, 1, 2-3. XXVII) |
フョードル・パーヴロヴィッチ:それはこうですよ、あの男は実際わしになんにもしやしませんが、その代わりわしのほうであの男に一つきたない、あつかましい仕打ちをしたんです。すると急にわしはあの男が憎らしくなりましてね。(ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』) |
◼️ヨーロッパのロシアに対する負い目(特に於第二次世界大戦) |
《負い目(シュルツ)》というあの道徳上の主要概念は、《負債(シュルデン)》というきわめて物質的な概念に由来している」と、ニーチェはいっている。彼が、情念の諸形態を断片的あるいは体系的に考察したどんなモラリストとも異なるのは、そこにいわば債権と債務の関係を見出した点においてである。俺があの男を憎むのは、あいつは俺に親切なのに俺はあいつにひどい仕打ちをしたからだ、とドストエフスキーの作中人物はいう。これは金を借りて返せない者が貸主を憎むこととちがいはない。つまり、罪の意識は債務感であり、憎悪はその打ち消しであるというのがニーチェの考えである。(柄谷行人『マルクスその可能性の中心』) |
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負い目とか個人的責務という感情[Das Gefühl der Schuld, der persönlichen Verpflichtung]は、われわれの見たところによれば、その起源を存在するかぎりの最も古い最も原始的な個人関係のうちに、すなわち、買手と売手[Käufer und Verkäufer]、債権者と債務者[Gläubiger und Schuldner]の間の関係のうちにもっている。ここで初めて個人が個人に対時し、ここで初めて個人が個人に対比された。この関係がすでに多少でも認められないほどに低度な文明というものは、未だに見出されないのである。値を附ける、価値を量る、等価物を案出し、交換するーーこれらのことは、人間の最も原初的な思惟を先入主として支配しており、従ってある意味では思惟そのものになっているほどだ。最も古い種類の明敏さはここで育てられた。人間の矜持、他の畜類に対する優越感の最初の萌芽も同じくここに求められるであろう。 |
事によると、《Mensch》[人間](manas) というわれわれの言葉もやはり、ほかならぬこの自己感情のあるものを表現しているのかもしれない。人間は価値を量る存在、評価し、量定する存在、「本来価値を査定する動物」として自らを特色づけた。Vielleicht drückt noch unser Wort »Mensch« (manas) gerade etwas von diesem Selbstgefühl aus: der Mensch bezeichnete sich als das Wesen, welches Werte mißt, wertet und mißt als das »abschätzende Tier an sich«. –(ニーチェ『道徳の系譜』第2篇8 ) |
◼️負い目からくる復讐欲動の発展としての正義 |
性欲動の発展としての同情と人類愛。復讐欲動の発展としての正義[Mitleid und Liebe zur Menschheit als Entwicklung des Geschlechtstriebes. Gerechtigkeit als Entwicklung des Rachetriebes. ](ニーチェ「力への意志」遺稿、1882 - Frühjahr 1887 ) |
◼️ファシズムなる正義 |
ヨーロッパで起きる次の戦争はロシア対ファシズムだ。ただし、ファシズムは民主主義と名乗るだろう[La próxima guerra en Europa será entre Rusia y el fascismo, pero al fascismo se le llamará democracia](フィデル・カストロ Fidel Castro、Max Lesnikとの対話にて、1990年) |
ファシズム的なものは受肉するんですよね、実際は。それは恐ろしいことなんですよ。軍隊の訓練も受肉しますけどね。もっとデリケートなところで、ファシズムというものも受肉するんですねえ。〔・・・〕マイルドな場合では「三井人」、三井の人って言うのはみんな三井ふうな歩き方をするとか、教授の喋り方に教室員が似て来るとか。〔・・・〕 アメリカの友人から九月十一日以後来る手紙というのはね、何かこう文体が違うんですよね。同じ人だったとは思えないくらい、何かパトリオティックになっているんですね。愛国的に。正義というのは受肉すると恐ろしいですな。(中井久夫「「身体の多重性」をめぐる対談――鷲田精一とともに」2003年『徴候・記憶・外傷』所収) |
◼️人類はこのくらい馬鹿であったのか |
正直に言いますと、毎日起きてテレビを見たり新聞を読んだりするのが大変不愉快であります。この戦争はまったく不必要な戦争なんですよ。で、不必要な戦争を始めて、それを長引かせようとしていると思う。それで、最終目的は単にプーチンを失脚させることだけではなくて、最終的にこれを推し進めると、ロシア文明自体を破壊することを狙っていると。 |
で、どこかの国が世界最強のスーパーパワーだからといって、1000年以上のしかも優れた文明をもつ国を根本から壊そうとしている。これはものすごくグロテスクな行為ですよね。しかもそのようなグロテスクな戦争がまったく不必要であると。 しかも世界中のマスコミが、日本だけじゃなくてアメリカだけじゃなくて、世界中の少なくとも西側諸国のマスコミが、アメリカが描いたシナリオの通りに進められている戦争に拍手喝采して、いかにもなにか自分たちが正義の戦争をやっていると思い込んでいる。 |
僕は毎日これを見せつけられるんですね。これはね、たいへん不愉快な話なんですね。で、人類とはこのくらい馬鹿であったかと。 要するにこういうことを仕組むアメリカのやり方にたいして腹が立つだけじゃなくて、それをたっぷり全部呑み込んで鵜呑みして、黄色い声をあげて、アメリカ頑張れ、ロシアは酷いと叫んでいる人類のすべてのマスメディアですよね、それからごく少数を除いたほとんどの政治家に対して、僕はこれはもう人類の判断力というのはこの程度のものかと。 |
こういう、はっきり言って僕に言わせれば非常に邪悪な戦争が、誰かによって企画されて、ロシアをその戦争に参加せざるを得ない立場に追い込んでいって、このままでいけばロシア国家だけでなくてロシア文明自体も破壊されるかもしれない。もちろん何万人何十万人のロシア人ウクライナ人が死ぬわけですよ。 それにもかかわらず人類のほとんどが気がついていないと、なにが起きているかということを。これはもうほんとうに不愉快なんですよね。(【伊藤貫の真剣な雑談】「ウクライナ危機の深層~危険なネオコンの思い上がりと戦後保守の愛国ゴッコ」[2022/5/14]) |
◼️スラブ人同士のいくさによる屍体の山の傍観 |
ロシアを弱体化させるという信念のもと、われわれのメディアはウクライナ社会の漸進的な消滅を推進している。逆説のようだが、これはわれわれの指導者のウクライナに対する見方と一致している。彼らは2014年から2022年にかけてのドンバスにおけるロシア語を話すウクライナ市民の虐殺に反応せず、今日のウクライナの損失にも言及しない。実際、我々のメディアや当局にとって、ウクライナ人は一種の「劣等人種 Untermenschen」であり、その人生は政治家の目標を満たすためだけにあるのだ。 |
In the belief that they are weakening Russia, our media are promoting the gradual disappearance of Ukrainian society. It seems like a paradox, but this is consistent with the way our leaders view Ukraine. They did not react to the massacres of Russian-speaking Ukrainian civilians in the Donbass between 2014 and 2022, nor do they mention Ukraine’s losses today. In fact, for our media and authorities, Ukrainians are a kind of “Untermenschen” whose life is only meant to satisfy the goals of our politicians.(ジャック=ボー「ハリコフと動員」2022年10月1日 Kharkov and Mobilization October 1, 2022 Jacques Baud) |
◼️信じられない、信じられないが事実です |
彼らは覇権を維持するために紛争を必要としている。そのために、彼らはウクライナ人を大砲の餌食(使い捨ての駒)として運命づけた。彼らは反ロシア計画を実行し、ネオナチ・イデオロギーの蔓延を黙認してきた。ドンバスの住民が何千人も殺されても見て見ぬふりをし、キエフ政権が使用する重火器を含む武器を流し続け、現在もそれを続けている。 |
They need conflicts to retain their hegemony. It is for this reason that they have destined the Ukrainian people to being used as cannon fodder. They have implemented the anti-Russia project and connived at the dissemination of the neo-Nazi ideology. They looked the other way when residents of Donbass were killed in their thousands and continued to pour weapons, including heavy weapons, for use by the Kiev regime, something that they persist in doing now. |
(プーチン第10回モスクワ国際安全保障会議 Address to participants and guests of the 10th Moscow Conference on International Security, August 16, 2022) |
信じられない、信じられないが事実です。(FABVOX 2120:プーチン大統領 ~ スターリングラード戦役80周年記念スピーチ (2023年2月2日) - Battle of Stalingrad 80th anniversary speech ) |
➡︎プーチンの年次教書演説(2023/02/22)における西側の「四つの嘘」と「二つの偽善」