このブログを検索

2023年2月22日水曜日

プーチン演説における「四つの嘘」と「二つの偽善」


 以下、プーチンの年次教書演説の邦訳における、西側の「四つの嘘」と「二つの偽善」の指摘である(嘘と偽善はもちろん相関的であり、引用にだぶるところがある)。


【全文】プーチン大統領 議会で年次教書演説 

2023年2月22日 より

嘘①


今、我々は、西側の指導者たちがドンバスの平和を目指すとした約束が口実であり、残酷なであったことを理解した。

彼らは時間を引き延ばし、形式主義を取り、政治的な殺害や気に入らない者に対するウクライナ政権の迫害、信者たちに対する侮辱的行為に目をつぶり、ドンバスにおけるウクライナのネオナチのテロ行為をますます強く奨励した。


嘘②


何世紀にもわたって植民地支配、独裁、覇権主義を続ける間に、彼らは何でも許されることに慣れ、世界中を無視するようになった。しかも彼らは自国民までも同じように堂々と軽蔑して扱うことがわかった。自国民もシニカルに騙し、平和を模索す国連安保のドンバスについての決議を順守しているなどと作り話をして、だまし続けた。実際、西側のエリートは原則を完全に欠いたの象徴と化してしまった。


嘘③


西側のエリートは自分たちの目標を隠そうともしていない。彼らははっきりと「ロシアに戦略的敗北」を与えるのが目標だと言っている。これはどういうことか。我々にとって、それは何を意味するのだろうか。これはつまり、我々とさっさと、永遠に決着をつけるということだ。つまり、彼らは局所的な紛争を世界的な対立の局面に転化させるつもりなのだ。我々はすべてをまさにこのように理解しており、相応の方法で対処していく。なぜならば、この場合、話はすでに我々の国の存続に関わるからだ。


だが彼らは戦場でロシアに勝つことは不可能だと認識しているため、我々に対してますます攻撃的に情報攻撃を仕掛けている。彼らが標的はもちろん若者たち、若い世代だ。そしてここでも彼らは終始をつき、史実を歪曲し、我々の文化、ロシア正教会、我が国に昔からある、他の宗教組織への攻撃を止めようとしない。


嘘④


彼らは我々に戦略的敗北を期させようとしており、我々の核施設に立ち入ろうとしている。これに関して今日、私はロシアは戦略兵器削減条約への参加を停止すると言わざるを得なくなった。繰り返すが、ロシアは条約から脱退するのではない。参加を停止するのだ。しかし、この問題の議論に戻る前に、英仏のようなNATO加盟国が何を要求しているのか、彼らの戦略兵器、つまりNATO全体の攻撃ポテンシャルを我々はどう考慮するのか、これを我々自身で理解する必要がある。


彼らは今、自分らの声明で、要するにこのプロセスへの参加を申請したのだ。めでたい。我々も反対しない。ただし平和とデタントの覇者の役割をきどって、再び皆にをつこうとしないでほしい。我々は、すべての背景を知っている。米国の核弾頭は種類によっては戦闘行為で使える保証期限が切れていることも知っている。このため、ワシントンの一部の人々は、本当に核兵器の発射実験を行う可能性を検討中だという情報をロシアはつかんでいる。しかも米国が新しいタイプの核弾頭を開発しているという事実をふまえている。





偽善①


我々はオープンかつ誠実に西側諸国との建設的な対話を行う構えだった。欧州も世界全体も、すべての国家にとって不可分の平等な安全保障システムを必要としていると主張しつづけ、この構想をともに話し合い、その実現に向けて作業するよう、長年にわたってパートナーらに提案してきた。だが、我々が受け取ってきた反応は、不明瞭か、または偽善的なものだった。これは言葉として受け取ってきた反応だが、具体的な行動もあった。それがロシアとの国境へのNATOの拡大、欧州とアジアでのミサイル防衛の新たな拠点の創設、つまり「傘」を使ってロシアから遮断すること、そして軍部隊の展開。しかもこれはロシアの国境付近だけにとどまらない。 


偽善②


今、彼らはNATOの代表らを通じてシグナルを送っている。事実上、我々に最後通牒を突きつけているのだ。お前たちロシアはSTART条約をはじめ、合意したことを無条件に実行せよ。我々のほうは好きなように行動する。STARTの問題と、例えばウクライナ紛争など、わが国に対する欧米の敵対行為とは関係がないと言わんばかりだ。戦略的敗北を与えたいという発言も響かない。これは偽善と皮肉の極みというか、愚かさの極みというか。だが彼らを白痴とは呼べない。彼らは結局は馬鹿な人間ではない。


彼らは我々に戦略的敗北を期させようとしており、我々の核施設に立ち入ろうとしている。これに関して今日、私はロシアは戦略兵器削減条約への参加を停止すると言わざるを得なくなった。繰り返すが、ロシアは条約から脱退するのではない。参加を停止するのだ。しかし、この問題の議論に戻る前に、英仏のようなNATO加盟国が何を要求しているのか、彼らの戦略兵器、つまりNATO全体の攻撃ポテンシャルを我々はどう考慮するのか、これを我々自身で理解する必要がある。




集団的西側の応援団は、このプーチンの指摘を逆に「嘘と偽善」とーーいまだにーー言うのかもしれない。さてどうだろう、米国主導の「ルールに基づく国際秩序」信奉者たち、例えば日本の国際政治学者たちは?  


私にはプーチンのこの指摘はどうあっても反論し難いように見える。もし人が反論し難いと感じるなら、いつまでも黙っているわけにはいかない。そうではないか? いまだ沈黙している者は「戦争犯罪人の共犯者」に他ならない。西側諸国の指導者や応援団に対して「もう十分だ!」と是非とも声を上げねばならない。そう、もしあなたがたが「末人」でないなら。《飼い主のいない、ひとつの畜群![Kein Hirt und Eine Heerde!]》(ニーチェ『ツァラトゥストラ』末人[letzten Menschen]の章)でないなら。