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2023年2月7日火曜日

米リベラルなる新自由主義プラス新保守主義(ネオコン)


ははあ、これは巧みな図だね(アメリカ民主党と共和党の違いを「1枚の図」にしてみた! 日高由美子:アートディレクター,  2022.8.18 2:30



実に勉強になるな、私のようにときに政治についてエラそうなことを書いているが実はほとんど無知な人間にとって(皆さんと同じように?)。

基本的には次の線なんだろうけど(ブッシュジュニア時代に書かれた論)。


保守主義とは共和党、とりわけ同党右派の政治信条。民主党の伝統的信条たるリベラリズムの対立概念でもある。一口に保守主義といっても、実際には、比較的穏健な中道保守から極端に右よりの保守まで、その主張の重点の置き方も千差万別である。ただ、米国の政治イデオロギーとしての保守主義とは、基本的に、①経済的には自由競争、②社会的には伝統的規範や倫理、③対外的には孤立主義 ―― を重視する立場をいう。一方、リベラリズムとは、①経済的には福祉等への政府支出、②社会的には個人の自由裁量権の保護、③対外的には国際主義 ―― を重視する立場を指す。


上記は両者の違いを浮かび上がらせるため、あえて対立概念的に整理を試みたものであるが、それにしても、保守、リベラルがそれぞれ重視する価値は対照的である。こうした価値の対照性は政策運営にも当然反映される。例えば、福祉の充実か自由競争のいずれを重視するかは、「大きな政府」か「小さな政府」かといった、政府の役割をめぐる議論にも還元されざるを得ない。また、個人の自由裁量権保護か伝統的規範の重視かという対立軸は、人工中絶、犯罪への姿勢など社会イシューで最も顕著に表れる。国際主義路線か孤立主義かの議論が展開されるのは対外政策の分野である。


米国の保守とリベラルを見る上で注意すべきは、他国にはないその独特のスペクトラムである。「自由」「政府介入」といったキーワードだけでは律し切れないところがある。例えば「自由」を基準にすれば、経済分野では、自由すなわち市場機能を重視するのは保守で、リベラルは政府介入の役割を評価する。だが、社会イシューでは、これが逆転する。リベラルは同性愛、人工中絶を人間の自由な選択に委ねるべしとの立場をとるのに対して、保守は伝統的規範や倫理重視の観点から、これらに非寛容である。つまり、保守とリベラルの「自由」への態度は、経済イシューと社会イシューでは逆転する。一筋縄ではいかないのだ。


米国の保守主義とリベラリズムがこのように独特の分類がなされるようになったのは何故か。その理由の1つは、米国の保守主義とリベラリズムはともに欧州の自由主義から派生したことに由来すると思われる。 「リベラリズム」の語を直訳すれば「自由主義」となるが、米国の政治理念を指す場合には、通常、自由主義といわずにリベラリズムという所以もこの辺にありそうだ。

(「ブッシュ政権の基本的性格 テロは何を変えたか」木内惠 Megumi Kiuchi (財)国際貿易投資研究所 研究主幹、PDF


図にすればこうなって、冒頭図の区分と基本部分は同じだ。



対外の項目の「国際主義/孤立主義」は、「新自由主義(米帝国主義)/アメリカンファースト」とも言い換えられるだろう。言葉上、厄介なのは、民主党が「新保守主義」つまりネオコンの牙城だということだな。リベラルな民主党が経済観点からの「新自由主義」を体現するのはまだしも、政治観点からの「新保守主義」をもリベラルが体現するという形になっている。



そもそもネオコン(Neoconservatism )とは、アメリカの「新しい保守主義」を指し、「国際政治へのアメリカの積極的介入」あるいは「アメリカの世界覇権」や「アメリカ的な思想を世界に広めること」などを信条としているため、従来の保守主義とは異なる。


ネオコンは今では「軍需産業」(武器商人)と密接に結びつき、アメリカの民主党との結びつきが強い傾向にある。ならば共和党はみな反ネオコンかと言ったら必ずしもそうではなく、後述するようにトランプ政権にも少なからぬネオコン派が入っていた。


ただ、本来の保守主義を主張するThe American Conservativeは、反ネオコンで、ウクライナ戦争は武器商人と結びついて、バイデン政権が起こしたものであるとしている。これは4月13日のコラム<ウクライナ戦争の責任はアメリカにある!――アメリカとフランスの研究者が>で書いた、アメリカのジョン・ミアシャイマー氏やフランスのエマニュエル・トッド氏などの見解と一致している。

(「アメリカはウクライナ戦争を終わらせたくない」と米保守系ウェブサイトが

遠藤誉 2022年4月16日より)



さらに米保守主義は、日本の保守主義とも大きく異なることも言葉上ひどく厄介。これについては、宇野重規氏が『保守主義とは何か』(2016 年)にて丸山真男と福田恆存を引きつつ、比較的詳しく書いている記述がネット上に落ちている。大阪市立大学大学院法学研究科法曹養成専攻入学者選抜試験の論文問題のようだが➡︎参照]。