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2023年3月17日金曜日

全党みな「やってるふり党」

 

「日本・やってるふり党」か。



だな、政治家は結局、票が欲しいだけだから。


ノーベル経済学賞者ブキャナンらがとっくの昔に言っていることだけど。


現実の民主主義社会では、政治家は選挙があるため、減税はできても増税は困難。民主主義の下で財政を均衡させ、政府の肥大化を防ぐには、憲法で財政均衡を義務付けるしかない。(ブキャナン&ワグナー著『赤字の民主主義 ケインズが遺したもの』)



ま、世界的に民主主義国はそうだとは言っても、日本はことさらひどいんだ。シルバーデモクラシーの国ということもある。



年齢層からみた多数派で、投票率も高い高齢者集団にアピールするようなキャンペーンを実施すれば、政治家はもっとも忠誠度の高い支持基盤を手に入れることができる。こうして、高齢社会が日本経済にどのようなコストを与えることになるとしても、「高齢者に優しい政策」が最優先とされている。高齢層の有権者の支持を失うことに対する恐怖が、政治家が長期的に国の未来を考えることを妨げ、これが若者に対する重荷をさらに大きくしている。〔・・・〕


要するに、日本は二つの問題を抱えこんでいる。日本社会は急速に高齢化し、そして、高齢者たちは、政治家が現行の社会保障システムに手をつけるのを認めるつもりはない。だが、高齢社会に向き合うのを先送りすればするほど、その経済コストは大きくなる。(アレクサンドラ・ハーニー「日本を抑え込む「シルバー民主主義」―― 日本が変われない本当の理由」2013)



わかっている少数の人も、もう言ってもムダだからあまり言わなくなっているんじゃないか。


社会保障は原因が非常に簡単で、人口減少で働く人が減って、高齢者が増えていく中で、今の賦課方式では行き詰まります。そうすると給付を削るか、負担を増やすかしかないのですが、そのどちらも難しいというのが社会保障問題の根本にあります。(小峰隆夫「いま一度、社会保障の未来を問う」2017年)

日本の場合、低福祉・低負担や高福祉・高負担という選択肢はなく、中福祉・高負担しかありえないことです。それに異論があるなら、 公的保険を小さくして自己負担を増やしていくか、産業化するといった全く違う発想が必要になるでしょう。(財政と社会保障 ~私たちはどのような国家像を目指すのか~ 大和総研理事長武藤敏郎、 2017年1月18日)




最大の論点を避け続けているのが、日本の国家議員だからな、全政党が「やってるふり党」であり、滑稽極まりないよ。


これからの日本の最大の論点は、少子高齢化で借金を返す人が激減する中、膨張する約1000兆円超の巨大な国家債務にどう対処していくのか、という点に尽きます。


私は、このままいけば、日本のギリシャ化は不可避であろうと思います。歳出削減もできない、増税も嫌だということであれば、もうデフォルト以外に道は残されていません。


日本国債がデフォルトとなれば必ずハイパーインフレが起こります。(大前研一「日本が突入するハイパーインフレの世界。企業とあなたは何に投資するべきか」2017年)




財政の持続可能性 

―― 金融システムと物価の安定の前提条件 ――

フランス銀行「Financial Stability Review」 (2012年4月号)掲載論文の邦訳   

日本銀行総裁 白川 方明   2012年4月21日 PDF

国債の償還原資は、基本的には国民から将来にわたって徴収する税と社会保険料である。これらの合計から、年金や医療など社会保障給付のほか防衛や教育等、政府が国民に対して提供する公共サービスの支出額を控除した財政余剰――すなわち、「税+社会保険料-社会保障給付-政府支出」――が、償還原資となる。将来にわたる財政余剰の予想に基づいた割引現在価値が、現在の国債発行残高を上回っていれば、政府のソルベンシーが満たされる――つまり政府に支払い能力がある――ということになる。 


逆に、財政余剰の割引現在価値が国債発行残高を下回る場合――すなわち政府に十分な支払い能力がないと予想される場合――、論理的には3つの可能性が存在する。

第1の可能性はデフォルトである。これは、国債保有者の負担によって、国債発行残高を財政余剰の割引現在価値まで削減することを意味する。しかし、国債は安全性や利便性の高い金融資産として金融機関に広く保有されているため、国債のデフォルトは金融機関の自己資本を毀損し、金融システムの不安定化を招くことになる。金融システムの不安定化の影響は実体経済に及び、それがまた金融システムや財政の状況を悪化させるという負の相乗作用につながる。


第2の可能性はインフレである。これは、政府の支払い能力の低下を、中央銀行の大幅な貨幣供給に伴う通貨発行益によって穴埋めする政策――すなわち、中央銀行の財政ファイナンス――によって実現しようというものである1。このシナリオでは、通貨発行益の増加によって国債の償還原資を補填しつつ、インフレにより政府の実質債務負担を減らすことによって、政府のデフォルトを回避する。ただし、物価の安定を放棄することは、経済の持続的な成長基盤を損ない、結局広く国民に損害を及ぼすことにつながる。


第3の可能性は、財政の健全化や、さらにそのために必要な経済成長力の強化に取り組んで、財政余剰の現在価値を高めることである。この選択肢が最も望ましいことは言うまでもない。ただし、民主主義のもとで、歳出の削減、税率や社会保険料の引き上げ、さらに成長力を高めるための制度改革を進めるには、社会としての合意形成が必要である。


以上の政府のソルベンシーを巡る問題についての基本的な考え方をまとめると、政府のソルベンシーに問題が生じた場合、その回復に必要な財政や経済の構造改革という選択肢を採らなければ、金融システム不安かインフレかという厳しいトレードオフに追い込まれる。議論の本質は、概念的にはこのように要約できるが、現実の状況における経済の帰結は、政府のソルベンシーが失われているかどうかを人々がどう判断するのか、あるいは金融システムが危機に瀕した際に中央銀行はどう行動し、それを人々はどう予測するかによって、大きく左右される。 (白川方明「財政の持続可能性」2012年4月21日)




この2012年の段階での白川元日銀総裁は「第2の可能性はインフレである」と穏やかに言っているが、これはもはや避け難いので、いつどのタイミングで来るかだけだ。


増税が難しければ、インフレ(による実質的な増税)しか途が残されていない恐れがあります。(池尾和人「このままでは将来、日本は深刻なインフレに直面する」2015年)

「妙案みたいなものは、もう簡単には見つかりません。『シートベルトを強く締めてください』と呼びかけたほうがいいかもしれませんね」 (池尾和人発言ーー「日銀バブルが日本を蝕む」」藤田知也, 2018年)

政府が財政規律を導入しないと、この金融政策はうまく機能しないと思います。徳政令か、インフレでゼロ価値にしてしまうといったドラスティックな対応が必要になってくるかもしれません。債務のリネゴシエーションが日本でも起こり得るかもしれません。


日本の場合、国債の保有者は国内の預金者なので可能かもしれませんが、徳政令はハイパーインフレ―ションの下では国民は財産を一気に失ってしまうことになります。そこから、この高齢化社会で立ち直れるのか。それぐらい厳しい条件だと政治家が認識して、責任を持って財政規律を導入しないと、状況はなかなか改善しないと思います。(北村行伸一橋大学経済研究所教授、如水会報(一橋大学OB誌)2017年10月号)