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2023年7月6日木曜日

フランスでは「国民の4人に1人は二代遡れば外国出身の血が混じっている」

 

フランスは移民統計では、世界のベスト20にも入らない。



これはわれわれの先入観からすればとっても奇妙に感じられるが、いわゆるフランスの「移民人口」は2019年時点で、13%弱である(ただし「移民の定義」参照)。



ところで、こんな資料に当たった。


これはどういう意味か。2000年の論文で少し古いが次のように説明されている。


◼️森洋明「フランスに於ける移民の現状と問題点」2001年

イスラム系移民とフランス社会との軋轢の背景には,フランス革命以来続いている「共和国精神」が影響しているのではないだろうか。その象徴的なのが第五共和国憲法の第一章「主権」の第一条に謳われている。「フランスは,不可分の非宗教的,民主的かつ社会的な共和国である。フランスは,出身,人種または宗教による区別なしに,すべての市民の法律の前の平等を保障する。フランスは,すべての信条を尊重する」。同憲法の前文に「フランス人民は, 1 9 4 6 年の憲法典前文によって確認され,かつ , 補充された1 7 8 9 年の宣言によって定義されるような人の権利および国民主権の原則へのその愛着を厳粛に宣言する」とあるように,この精神は「人は,自由,かつ,権利に於いて平等なものとして出生し,かつ,存在する。社会的差別は,共同の利益に基づくのでなければ設けられることができない」となっている 1 7 8 9 年のフランス革命の際に出された人権宣言第一条に呼応する。


歴史を通じて多くの移民を受け入れてきたフランスは,移民の国と言っても過言ではない。社会学者エドガール・モラン氏もフランスの情報雑誌 L a b e l F r a n c e のインタビューの中で, 「フランスはイル・ド・フランス(パリのある地方の名称)という小さな王国が,幾世紀にも亘って多種多様な地域を同化させてきた国であり,絶えざるフランス化によって成り立つ国として特徴づけられる」と指摘する。また「フランスは1 9 世紀以降,他のヨーロッパ諸国と違って,唯一移民を受け入れた国である」と続け , 「フランスは,第三共和制 ( 1 8 7 0 年)以降,フランスで出生した子供に対し学校教育や帰化を通じて,外国人をフランスに同化させてきた」 と, フランスの同化政策を分析する。 そしてこの同化政策の具体的な形が, フランスの国籍法に見て取ることができる。


フランスの国籍は血統主義だけでなく出生地主義とミックスした形をとっている。


国籍法23条には, 「両親が外国人でもそのいずれかがフランス生まれの場合は, そ

の子供がフランス生まれであれば, 出生時点からフランス国籍を持つ。」 とされてお

り,また国籍法44条 (国籍自動取得, 1889年~)には, 「両親ともに外国生まれの外国人でも,フランスで生まれたその子供は18才になったときフランス国籍を取得できる」とある。前者は二世代出生地主義と呼ばれており, 1851年から施行されている。また後者は国籍自動取得に関したもので, 1889年に施行されている。 このような法律の背景には、 当時から兵力要員の確保を狙う立法者の強い意志があった。 それはまた先に述べたフランスの出生率はヨーロッパに先駆けて低くなっていた事実からも裏付けられる。


他の国と比較してみると, ヨーロッパで在住外国人が最も多いのは表3でも分かるようにドイツである。 1993年ドイツでの485万人はフランスの360万人よりはるかに多い。しかし, その内面は, 国籍取得の条件の違いが大きく影響する。つまりドイツはフランスと違い, 血統主義しかとっていないので, 外国人からは外国人しか生まれてこない仕組みになっているのである。


1990年を例にとると, 5305万人のフランス人口の内, フランスに移住してきた外国人(外国生まれ)は413万人いる。そのうちフランス国籍を取得している人が129万人いた。 残りの284万人と, 国籍法によりフランス国籍を取得する資格があっても取得していない2世外国人が74万人で合計358万人になる。 しかしフランス国籍を持つ人の中には, 国籍法23条と44条でフランス国籍を既に得た二世外国人 (フランス生まれ)が含まれていることを忘れてはいけない。 フランス人口研究所の調べによるとその数は420万人である。 まだフランス国籍を持っていない二世外国人 (74万人)と合わせると500万人にもなる。 しかし血統主義だけをとっているドイツに於いては, こうした人たちはすべて外国人のままである。 さらに三世外国人が440万人から530万人。 フランス生まれの二世は必然的に全員フランス国籍を持つようになる。 ドイツではこうした人たちも外国人のままである。 これらのことを考慮するなら, その数は1200~1300万人に達する。 以上のようなことが, フランスでは, 「国民の4人に1人は二代遡れば外国出身の血が混じっている」といわれる所以である。



二代遡るだけで国民の4人に1人が外国出身の血が混じっているのなら、もっと遡れば純粋フランス人はわずかである。


これが中井久夫が次のように言っている内実である。


現在のフランスで二〇世紀初頭のフランス人だった人の子孫は何割もいない。過去のギリシャも、ローマもそうであったと推定されている。(中井久夫「親密性と安全性と家計の共有性と」初出2000年『時のしずく』所収)

少子化の進んでいる日本は、周囲の目に見えない人口圧力にたえず曝されている。二〇世紀西ヨーロッパの諸国が例外なくその人口減少を周囲からの移民によって埋めていることを思えば、好むと好まざるとにかかわらず、遅かれ早かれ同じ事態が日本にも起こるであろう。今フランス人である人で一世紀前もフランス人であった人の子孫は二、三割であるという。現に中小企業の経営者で、外国人労働者なしにな事業が成り立たないと公言する人は一人や二人ではない。外国人労働者と日本人との家庭もすでに珍しくない。人口圧力差に抗らって成功した例を私は知らない。(中井久夫「災害被害者が差別されるとき」初出2000年『時のしずく』所収)


日本は移民人口はいまだ小さいが、1年間の移民流入者数は世界4位らしいね(2015年時点)。