前回つけ加えようとして思い留まった若きマルクスーー26歳時ーーの草稿から、「貨幣は神、貨幣は娼婦」をここに単独で引用しておこう。
シェイクスピアは『アテネのタイモン』のなかでいう、 「黄金か。〔・・・〕 こいつがこのくらいあれば黒も白に、醜も美に、 悪も善に、老も若に、臆病も勇敢に、卑賤も高貴にかえる」 〔・・・〕 |
シェイクスピアは貨幣についてとくに二つの属性をうきぼりにしている。 (1) 貨幣は目に見える神であり、一切の人間的なまたは自然的な諸属性をその反対のものへと変ずるものであり、諸事物の全般的な倒錯と転倒とである。それはできないことごとを兄弟のように親しくする。 (2) 貨幣は一般的な娼婦であり、人間と諸国民との一般的な取りもち役である。 |
Shakespeare hebt an dem Geld besonders 2 Eigenschaften heraus: 1. Es ist die sichtbare Gottheit, die Verwandlung aller menschlichen und natürlichen Eigenschaften in ihr Gegenteil, die allgemeine Verwechslung und Verkehrung der Dinge; es verbrüdert Unmöglichkeiten; 2. Es ist die allgemeine Hure, der allgemeine Kuppler der Menschen und Völker. |
貨幣が一切の人間的および自然的な性質を転倒させまた倒錯させること、できないことごとを兄弟のように親しくさせることーー神的な力――は、人間の疎外された類的本質、外化されつつあり自己を譲渡しつつある類的本質としての、貨幣の本質のなかに存している。貨幣は人類の外化された能力である。 私が人間としての資格においてはなしえないこと、したがって、貨幣はこれらの各本質諸力のいずれをも、それがそれ自体としてはそうでないようなあるもの、すなわち反対のものに変ずるのである。 |
Die Verkehrung und Verwechslung aller menschlichen und natürlichen Qualitäten, die Verbrüderung der Unmöglichkeiten – die göttliche Kraft –des Geldes liegt in seinem Wesen als dem entfremdeten, entäußernden und sich veräußernden Gattungswesen der Menschen. Es ist das entäußerte Vermögen der Menschheit. Was ich qua Mensch nicht vermag, was also alle meine individuellen Wesenskräfte nicht vermögen, das vermag ich durch das Geld. Das Geld macht also jede dieser Wesenskräfte zu etwas, was sie an sich nicht ist, d.h. zu ihrem Gegenteil. |
(マルクス『経済学・哲学草稿』Karl Marx, Ökonomisch-philosophische Manuskripte, 1844年) |