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2023年7月25日火曜日

無理がかかっているだろうプーチン

 

プーチン自身も綱渡りだろうな、



たぶん集団的西側に対する破壊欲動がプーチンのなかで渦巻いているよ、彼の心のなかで「無理がかかって」いないなどとは想像できない。


私たちの中には破壊性がある。自己破壊性と他者破壊性とは時に紙一重である、それは、天秤の左右の皿かもしれない。〔・・・〕私たちは、自分たちの中の破壊性を何とか手なずけなければならない。かつては、そのために多くの社会的捌け口があった。今、その相当部分はインターネットの書き込みに集中しているのではないだろうか。(中井久夫「「踏み越え」について」2003年『徴候・記憶・外傷』所収)


抑制されつづけてきた自己破壊衝動が「踏み越え」をやさしくする場合がある。「いい子」「努力家」は無理がかかっている場合が多い。ある学生は働いている母親の仕送りで生活していたが、ある時、パチンコをしていて止まらなくなり、そのうちに姿は見えないが声が聞こえた。「どんどんすってしまえ、すっからかんになったら楽になるぞ」。解離された自己破壊衝動の囁きである。また、四十年間、営々と努力して市でいちばんおいしいという評価を得るようになったヤキトリ屋さんがあった。主人はいつも白衣を着て暑い調理場に出て緊張した表情で陣頭指揮をしてあちこちに気配りをしていた。ある時、にわかに閉店した。野球賭博に店を賭けて、すべてを失ったとのことであった。私は、積木を高々と積んでから一気にガラガラと壊すのを快とする子ども時代の経験を思い合わせた。主人が店を賭けた瞬間はどうであったろうか。(中井久夫「「踏み越え」について」2003年『徴候・記憶・外傷』所収)


※解離=排除=原抑圧

サリヴァンも解離という言葉を使っていますが、これは一般の神経症論でいう解離とは違います。むしろ排除です。フロイトが「外に放り投げる」という意味の Verwerfung という言葉で言わんとするものです。〔・・・〕解離とその他の防衛機制との違いは何かというと、防衛としての解離は言語以前ということです。それに対してその他の防衛機制は言語と大きな関係があります。(中井久夫「統合失調症とトラウマ」初出2002年『徴候・記憶・外傷』所収)

原抑圧は排除である[refoulement originaire…à savoir la forclusion. ](J.-A. MILLER, CE QUI FAIT INSIGNE COURS DU 3 JUIN 1987)


➡︎フロイトにおける自己破壊欲動の四つの記述





フロイトの思考のもとでは、自己破壊欲動自体、結局、原抑圧されたものの回帰であり(参照)、その投射(投影)、あるいは防衛として他者破壊欲動が生じる。


フロイトの投射メカニズム[le mécanisme de la projection]の定式は次のものである…内部で拒絶されたものは、外部に現れる[ce qui a été rejeté de l'intérieur réapparaît par l'extérieur](ラカン, S3, 11 Avril 1956)






このプーチンとルカシェンコの対話は「意図的に」ポーランドを挑発しているようにさえ見えるからな。


➡︎動画


ルカシェンコは役者だよ、プーチンも実はそうかもしれないが。ま、もちろん人はみな、多かれ少なかれそれぞれの仕方で、役者なんだが、ーー《この世界はすべてこれひとつの舞台、人間は男女を問わず すべてこれ役者にすぎぬ(All the world's a stage, And all the men and women merely players.)》(シェイクスピア『お気に召すまま』)

MANPYO氏は「欧州を消し去るだろう」と言ってるがね。


DULLES N. MANPYO @iDulles    Jul 23, 2023

「ロシア連邦軍は全軍規模で集中戦闘訓練を本格化させている。これと前後して、ロシア元首の金曜演説は、〝優柔不断〟なワルシャワを促すメッセージ性を帯び、彼らの鬱屈の自己開放をプレゼントするものであると、私は受け取ったが、白ロシア元首のモスクワ行きも連動するものだろう。政権与党は鋭く反射している。幾たびか挙げているチャーチル卿の『ポーランドは欧州のハイエナである』の評がいかに執拗巧緻か私、私たちは領っている。ロシア元首はそれを万万察している。友人曰く、『今私たちは絶望の戦争に引きずり込まれるか、それとも踏み止まれるかの前だ。世界は歴史に誠実になるべきだとおもっている』。そのポルスカは今極めて矛盾した位置に移動している。第一に、狂信的国家主義勢力は、第一次大戦後に生じたエルベまでの独とバルト諸国を手に入れようとした欲動を隠さないということ。この線で対独賠償請求を持ち出し、欧盟における主導権役から独を引きずり降ろす企図を実行し、これにバイデンとそのカルテルを巻き込むことに奏功。その機を窺っている。これが西の矛盾である。世界はまったくこの脅威を無視しているし、察らないが、この目論見が達成される可能性がじゅうぶんにある。第二は、バンデライナからの穀物輸送通過拒否と、大虐殺に関するキエフへの公式贖罪要求だ。この関係の変異は、キエフとの衝突を事前に念頭されてをり、キエフは報復としてテロ攻撃を行う可能性が高い、これが東の矛盾だ。この両方の矛盾が燃え上がった機、なにが起こるか。暴動は起きるだろう、騒乱もあるだろう。だがそれらは瑣末なことでしかない。欧州を消し去るだろう。ハンガリー政府が想定するような、英・仏・独・伊の式微で済むのような規模ではない」 -0-



実際、プーチンやラブロフ等は実存的脅威[экзистенциальную угрозу](存亡の危機)という表現を繰り返しているからな、


2008年4月以来、ロシアの指導者たちが、ウクライナをNATOに加盟させ、ロシア国境の西側の防波堤にしようとする西側の努力を、実存的脅威と見なしていることは明らかだ。実際、プーチン大統領とその側近たちは、ウクライナがほぼ事実上のNATO加盟国であることが明らかになりつつあったロシア侵攻前の数カ月間、繰り返しこの点を指摘していた。


2022年2月24日に戦争が始まって以来、西側諸国は、ロシアの指導者たちが極めて脅威と見なさずにはいられないような新たな目標を採用することで、その実存的脅威に新たなレイヤーを追加した。

It has been clear since April 2008 that Russian leaders across the board view the West’s efforts to bring Ukraine into NATO and make it a Western bulwark on Russia’s borders as an existential threat. Indeed, President Putin and his lieutenants repeatedly made this point in the months before the Russian invasion, when it was becoming clear to them that Ukraine was almost a de facto member of NATO.


Since the war began on 24 February 2022, the West has added another layer to that existential threat by adopting a new set of goals that Russian leaders cannot help but view as extremely threatening.

(ジョン・J・ミアシャイマー「前途の闇:ウクライナ戦争の行方」The Darkness Ahead: Where The Ukraine War Is Headed, JOHN J. MEARSHEIMER 2023/06/24)



世界とは言わないまでも「欧州の終わり」ぐらいの投影機制が働いてもやむ得ないよ、ーー《世界の終わりは内的カタストロフィの投射である[Der Weltuntergang ist die Projektion dieser innerlichen Katastrophe]》(フロイト『症例シュレーバー』第3章、1911年)


そういえば、カレン・シャフナザーロフ (Karen Shakhnazarov)というロシアの映画監督のこんな話があったな、



映画監督シャフナザロフ:

西洋文明は終焉を

迎えている

Шахназаров: западная цивили

зация заканчивается

Vesti War in Ukraine #1720 16 Oct 2022


ロシア語翻訳・青山貞一(東京都市大学名誉教授)

独立系メディア E-wave Tokyo 20221017


本文


 歴史の過程には、同時代の人々には見えないが、数十年後に明らかになることがある、とロシアの映画監督カレン・シャフナザーロフ(Karen Shakhnazarov)は言う。


 状況は今や誰も勝てないところへ向かっている」とシャフナザーロフはウラジミール・ソロビョフ(Vladimir Solovyov)の番組「Sunday Evening」で述べた(番組全文はSmotrimプラットフォームで視聴可能)。


 500600続いた西洋文明の支配が終わりつつあるという。


 「この歴史的なプロセスに情熱的に抵抗しているが、権力の中心はアジアに移動している」とロシア人民芸術家は述べている。


 - いや、このプロセスは単純ではないし、西洋文明も無力ではない。そのパワーと経済的・軍事的な大きな潜在力を保持している」。


 西洋文明が終わりつつあるのは、単純な理由で、その時が来たからだ。「人間で言えば、病気の塊で、年をとって、成人式を迎えるようなものである。その理由は何だろうか。何も、ただその時が来ただけだ。そして哲学者や歴史家は、その時に100万個の理由を見つけるだろう。」


 「我々はこの文明の一部なのか、それとも違うのか?- カレン・シャフナザロフが続けた。- 例えば、中国人やインド人にとって、私たちは西洋人である。そして、私たちは忘却の彼方へ消えてしまいたくないのだ。私にとっては、これは未解決の問題なのである」。


 さらに、歴史にとって、一つの文明の中での戦いが自滅につながることもある、と付け加えた。「繰り返しますが、私は本当に核戦争にならないことを望むが、そうなりそうな症状がたくさんある」と。