間違い 谷川俊太郎 わたしのまちがいだった わたしの まちがいだった こうして 草にすわれば それがわかる そう八木重吉は書いた(その息遣いが聞こえる) そんなにも深く自分の間違いが 腑に落ちたことが私にあったか |
草に座れないから まわりはコンクリートしかないから 私は自分の間違いを知ることができない たったひとつでも間違いに気づいたら すべてがいちどきに瓦解しかねない 椅子に座って私はぼんやりそう思う |
私の間違いじゃないあなたの間違いだ あなたの間違いじゃない彼等の間違いだ みんなが間違っていれば誰も気づかない 草に座れぬまま私は死ぬのだ 間違ったまま私は死ぬのだ 間違いを探しあぐねて |
ーー『日々の地図』所収 1996年
良い詩だね、八木重吉がとくにいいんだが。
初稿は旧仮名と新仮名が混淆した、そして最初の1行に息遣いのスペースがあったそうだ。
草にすわるのを忘れると
人は頑なになるのだろうか
いや私は日々半時間は草にすわって
雑草取りをするのだけれど頑固のままだ
私の間違いじゃないあなたの間違いだ
あなたの間違いじゃない彼等の間違いだ
ーーとは言わないが
きみたちの間違いだと言って
このきみたちにはわたしも含まれる
と言うのだが
草にすわると こうなるよ