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2016年5月17日火曜日

声に末期の 水をのみ

早くして 仕舞いなと 下女ひんまくり (摘)

をしいこと まくる所を下女 呼ばれ(摘)






したい時ア いつでも云えと 下女に云い(摘)

したい時ア 半時待てと 嚊に云い

ふた刻で 効験あらかた カマストラ

良薬を 用いた晩は なきわめき(摘)




若後家の、胡粉で白く塗られた足の指は、傳來の畫法によつて、悉く内側へ深く撓められてゐる。からめた白い腿から顫動が走つて、足指のところで堰かれて、曲られた指の緊張が、無限に流れ去らうとする恍惚を遁がすまいと力んでゐるように見える。(三島由紀夫「春の雪」)

をみなごのふち澄みうるほひ をりふしにおとがひあげて 鶴さはに鳴く

もう一つ させてたもれと ゆり起こし(摘)

初々しく またぐら おっぱたげ (摘)





裏表 下女二た晩に おねだり出し (摘)

死にますの 声に末期の 水をのみ (摘)

嚊と婢女 汐干にみえぬ貝と貝 やらやらもあり





三度の飯は常食にして、佳肴山をなすとも、おやつになればお茶菓子もよし。屋台店の立喰、用足の帰り道なぞ忘れがたき味あり。女房は三度の飯なり。立喰の鮓に舌鼓打てばとて、三度の飯がいらぬといふ訳あるべからず。家にきまつた三度の飯あればこそ、間食のぜいたくも言へるなり。此の理知らば女房たるもの何ぞ焼くに及ばんや。(荷風『四畳半襖の下張』)