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2023年5月26日金曜日

「ルールに基づく国際秩序」と「法の支配に基づく国際秩序」

 

美魔女で噂高いらしい(?)法学者江藤名保子さんだが、広島G7のキーワードとして「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序(the free and open international order based on the rule of law)」を挙げている。

◼️広島サミット影の主役・中国が描く国際秩序とは(江藤名保子)

地経学ブリーフィング / 2023/05/22

注目すべきキーワードは、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序(the free and open international order based on the rule of law)」である。

これまで日本を含むG7各国はしばしば「ルールに基づく国際秩序(rules-based international order)」という表現を共通概念としてきたが、4月のG7外相会議からは「法の支配(rule of law)」がキーワードとなってきた。

一見すると技術的な表現の調整のようにみえるが、実は「ルールに基づく国際秩序」という際のルールは誰が決めるのか、既存の国際秩序は先進国に有利なので改変が必要ではないかといったグローバル・サウスの不満をかわす意図がにじむ表現の変更である。

さらに中国政治において「法の支配」の主張は、共産党の一党独裁体制への批判を含意する。中国には法治のあり方を示す、「依法治国(法による治国)」という政治用語があるが、その実態はrule of lawではなく、rule by law(法を用いた統治)だとする解釈が定着している。中国政府は「法の支配」を否定はしないものの、実態として統治者(governor)である共産党政権が法(law)よりも上位に位置するためである。



ーーネット上に落ちている彼女の写真をジックリ見てしまったが、いやぁ実に美しい方である・・・(以下略)



閑話休題。


・・・というわけだが(?)、そもそも国際法自体、解釈の揺れ動きの問題がある。例えばしばしば指摘される2003年の米国のイラク侵攻である(あれはアングロサクソンの侵攻というべきかもしれないが)。一般には、国際法を無視した行動であるという批判がなされてきたが、米英は別の解釈を提示している➡︎参照イラク戦争の法的正当化は可能か」。


他方、ロシアのウクライナ侵攻は国際法違反というのがコンセンサスになっているが、いやそうではない、とする国際人権学者ダニエル・コバリクーーミアシャイマーに多くを学んでいることがよくうかがわれる人物であるーーの「国際法上、ロシアのウクライナ介入が合法な理由」Daniel Kovalik: Why Russia's intervention in Ukraine is legal under international law, 23 Apr, 2022という論もある。➡︎参照


国際法どころか法律自体にまったく疎い私はその正否をうんぬんするつもりは毛ほどもないが、このコバリクの論はもっと注目されていいようには思う。



・・・ということも余談であり、ここでの目的はこの一年のあいだにメモしてきた「ルールに基づく国際秩序」批判のいくつかを列挙することである。



◼️なぜ西側諸国はロシアについて間違ったのか スコット・リッター

Why the West Got It Wrong on Russia  Scott Ritter,  Aug 1, 2022

ロシアと中国は、いわゆる「ルールに基づく国際秩序」の優位性と正当性を否定し、代わりに国連憲章に基づく「法に基づく国際秩序」と呼ぶべきものを推進している。非欧米諸国の多くは、この点で、ロシアと中国に賛同している。G7やG20が低迷する中、Bricsフォーラムは規模と関連性を拡大しつつある。


Russia and China have rejected the primacy and legitimacy of the so-called “rules-based international order,” instead promoting what they call a “law-based international order” founded in the United Nations Charter. Much of the non-Western world is rallying behind Russia and China in this regard: The Brics forum is expanding in size and relevance, while the G7 and G20 flounder.




◼️ジャック・ボーの最新インタビュー

Our latest interview with Jacques Baud

Originally published: The Postil Magazine on September 1, 2022 by The Postil Magazine

TP:この戦争は、最終的にヨーロッパ、アメリカ、中国にとってどのような意味を持つとお考えでしょうか?


JB:この問いに答えるには、まず別の問いに答えなければならない。「なぜこの紛争は、西側諸国が始めた過去の紛争よりも非難され、制裁されるのか?」

アフガニスタン、イラク、リビア、マリの惨事の後、世界の他の国々は、西側が常識的にこの危機を解決する手助けをすることを期待した。西側諸国は、こうした期待とはまったく逆の反応を示した。この紛争がなぜ以前の紛争よりも非難されるべきものなのか、誰も説明できないばかりか、ロシアと米国の扱いの違いから、被害者よりも加害者の方が重視されていることが明らかになったのである。ロシアの崩壊をもたらす努力は、国連安全保障理事会に嘘をつき、拷問を行い、100万人以上の死者を出し、3700万人の難民を生み出した国々の完全な免罪符と対照的である。


この扱いの違いは、欧米では気づかれなかった。しかし、「世界の他の国々」は、「法に基づく国際秩序」から、欧米が決定する「ルールに基づく国際秩序」に移行したことを理解したのである[But the “rest of the world” has understood that we have moved from a “law-based international order” to a “rules-based international order” determined by the West.]

より物質的なレベルでは、2020年に英国によるベネズエラの金塊の没収、2021年にアフガニスタンの政府資金の没収、そして2022年に米国によるロシアの政府資金の没収があり、西側の同盟国の不信感を高めている。これは、非西側世界がもはや法に守られず、西側の善意に依存していることを示している。


この対立は、新しい世界秩序の出発点なのだろう。世界が一気に変わるわけではないが、この紛争は世界の人々の関心を高めた。「国際社会」がロシアを非難するといっても、実際には世界人口の18%の話なのだから。


伝統的に西側に近いアクターも、徐々に西側から遠ざかっている。2022年7月15日、ジョー・バイデンは、サウジアラビアがロシアや中国に接近するのを阻止することと、石油の増産を求めるという2つの目的で、モハメド・ビン・サルマン(MbS)を訪ねた。しかし、その4日前にMbSはBRICSのメンバーになることを正式に要請し、1週間後の7月21日にはMbSはプーチンに電話し、OPEC+の決定を支持することを確認したのである。つまり、原油増産はなし。欧米とその最強の代表の顔への平手打ちであった。




◼️ドイツとEUは宣戦布告を手渡された ぺぺ・エスコバル 

Germany and EU Have Been Handed Over a Declaration of War

PEPE ESCOBAR • SEPTEMBER 28, 2022

バルト海のノルドストリーム(NS)とノルドストリーム2(NS2)のパイプラインに対する破壊工作は、「惨事便乗型資本主義」をまったく新しい有害なレベルにまで押し上げるものである。

このハイブリッド産業・商業戦争の出来事は、国際海域のエネルギー・インフラに対するテロ攻撃という形で、「我々のやり方か本道か」「ルールに基づく」秩序に溺れた国際法の絶対的崩壊を告げるものである。


The sabotage of the Nord Stream (NS) and Nord Stream 2 (NS2) pipelines in the Baltic Sea has ominously propelled ‘Disaster Capitalism’ to a whole new, toxic level.

This episode of Hybrid Industrial/Commercial War, in the form of a terror attack against energy infrastructure in international waters signals the absolute collapse of international law, drowned by a “our way or the highway”, “rules-based”, order.



…………………



◼️解放軍報「アメリカの二重基準「ルール」は世界が乱れる源」(中国語原題:"美式"规则"成世界乱源|一,言行相悖虚成性") 鈞声署名論評 2022年7月4日

骨の髄まで染み渡った「アメリカ的二重基準」の症状がまた発作を始めた。ブリンケンの最近の演説は、中国が世界秩序の「もっとも深刻な長期的挑戦」であると公言した。しかし、まともな眼力のある人であるならば、国内法を国際法に優先させ、国際ルールに関しては自分の都合に合えば使い、合わなければ捨てるアメリカこそが国際秩序を乱す最大の原因であることを見て取ることだろう。


アメリカの政治屋にとって、「国際ルール」というモノサシは他人を計るもので自分を規制するものではない。「ルールに基づく国際秩序」なるものも、アメリカ以下の少数の国々が勝手に決めたものに過ぎず、守ろうとするのはアメリカ主導の「秩序」であって、私利をむさぼることこそが真の目的である。長期にわたるアメリカのこのような行動は、世界の政治経済秩序を深刻に破壊し、グローバルな安全と安定を脅かすに至っている。〔・・・〕

アメリカがかくも厚顔無恥で、平然と二重基準に訴えるのは、本を正せば、「アメリカだけは特別・例外」という覇権思想が脳みそに巣くっているためだ。その本質は自己優越論であり、アメリカは他の国々とは違い、「偉大であることが運命づけられ」、「世界を導かなければならない」ということにある。しかし、歴史が証明しているとおり、このイデオロギーは虚妄であるだけに留まらず、極めて有害でさえある。アメリカの著名な経済学者ジェフリー・ザックスは著書『新しい外交政策:アメリカの例外主義を超えて』の中で次のように指摘している。すなわち、各国の利益は密接に関わり合い、運命を共にしており、歴史上のいかなる時にも増して国際協力を強め、人類社会が直面するリスクと挑戦に共同で対処するべき時に、アメリカ政府は独り我が道を行き、勝手に国際ルールを破壊している。これは「アメリカ例外主義」の表れであり、自らを深刻に害し、世界にとっては非常に危険なことである。


事実が証明しているとおり、二重基準を奉じ、「アメリカは特別・例外」を行うアメリカは「ならず者国家」になるだけである。真のスタンダードに対しては、世人の胸の内には一定のはかりがある。アメリカには以下のことを勧告する。「二重基準」をやめ、国際的に公認されたルール及びスタンダードを遵守する正しい軌道に戻ることだ。さもなければ、国家のイメージを台無しにし、国際的信用が完全に失われるだけである。





◼️「ルールに基づく国際秩序」にルールと秩序の居場所はない

No place for rules and order in the 'rules-based international order'

Xin Ping 18-Oct-2022

米国が喧伝する「ルールに基づく国際秩序」は、暴力と弱肉強食を礼賛する秩序である。米国は自国の強さを語り続け、柔軟な筋肉に喜びを感じている。240年以上の歴史の中で、224年以上戦争をしており、残りの16年は戦争を仕掛けることに忙しかった。ほとんどすべてのホットスポット問題で、米国は軍事的圧力をかけ、戦争を煽り、外交交渉を妨害することに熱心である。イェール大学のデビッド・ブロムウィッチ教授は、「規範は、米国が或る瞬間に望むものから生まれる...」と率直に述べている。「私たちは最も軍国主義的な国である。自国を武装化するために使えるエネルギーをすべて使って、他国民が互いに殺し合うのを助けるために武器を売っている」。

The "rules-based international order" touted by the U.S. is an order that venerates violence and the law of the jungle. The U.S. keeps talking about its position of strength and enjoys flexing muscles. The country was at war in more than 224 years throughout its over 240 years of history, and in the remaining 16 years it was busy starting one. On almost all hot-spot issues, the U.S. is keen on exerting military pressure, war-mongering and sabotaging diplomatic negotiations. Yale University professor David Bromwich said bluntly that "the norms come from what the U.S. desires at a given moment... We are the most militarized of nations. With all the energy we can spare from arming ourselves, we sell weapons to help other people kill each other."




◼️ラブロフ露外相 2022年7月27日スピーチ

〔・・・〕我々は、西側が意図する、国際法ではなく彼らのルールによって動かされる世界を選ばなくてはならないかという問題だ。彼らは「ルールに基づく世界秩序」という表現を編み出した。西側の実際の行動を分析すれば、これらのルールがケース・バイ・ケースで違うことが分かる。単一の基準は存在しない。そこにはたった一つの原則しか存在しない。すなわち、西側が欲することには従え、さもなければ罰せられる、ということだ。これが西側の推進する「ルールに基づく世界秩序」の示す将来の姿だ。要するに、EU及びアジアの同盟国を自分の意志に従属させたアメリカの一極世界である。これは提案ではなく最後通告だ。



さらにもう一つ、これはリンクだけにしておくが、元外交官浅井基文氏の具体例を示しつつのよくまとまった記述である、➡︎「米欧流「ルールに基づく国際秩序」(Rule-based International Order) の暴力的本質」(2022/05/22)


…………


というわけだが、上を記したあとツイッターを眺めると、専業主婦の美魔女も鋭いこと言ってるなぁ



江藤名保子さんにもTVでこれぐらいのことを言って頂けることを期待します。あれら厚顔無恥な国際政治学者連中を美の魔法の杖で消し去って頂けることを祈りつつ(マサカ連中ト同ジ穴ノ貉ジャネエダロ?)