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2025年8月4日月曜日

「下翼」の起源の誤解ーーGrokさん、お分かりだろうか。

 

最近、「下翼の定義」に関わってGrokを経由したリンクがあるのだが、私が最初に「下翼」という語を使い始めた、というのは誤謬である。



「下翼の定義」には記していないが、その少し前の記事「信者集団の感情結合の構造」に、城繁幸氏のブログを引用しつつ彼が使った語であることを示している。以下に再掲しておこう。


◼️TPPや共謀罪、水道民営化…なぜ反対の顔ぶれが毎度同じなの?

2018年07月26日 城 繁幸

ここで一つ疑問が残ります。彼らはなぜまったく反省しないんでしょうか。たとえば直近のTPPとか共謀罪デマで空振りした後の動向をチェックしてみると面白いんですが、彼らは反省とか総括は一切やらず、そのまま無言ですぐに次のネタを発掘しはじめるんですね。その最新版が水道民営化というわけです(西日本水害でもいろいろやってたようですがSNSで良識派に速攻駆除された模様)。


このことからは、彼らは別に社会をよくしようとか何かを守ろうとかは実は全然考えてなくて、本当のところは自己満足のために運動してるだけということがわかります。運動、あるいは闘争それ自体が目的ということです。本当に何かを実現したい人というのは必ず失敗を総括して乗り越えようとするものですからね。


そういう意味では、問題の本質は彼ら自身の心の中にあるといっていいでしょう。

世の中には、より成長し豊かになろうと上を向いて努力する人達がいます。それに対し、何か変えたら今よりずっと悪くなるぞ、みんな貧乏になるぞ、と下ばっかみて騒ぐ上記のような一群の人たちも存在します。


実は、日本においては左右の間で議論らしい議論はほとんど行われておらず、上下の間で(陰謀論をベースにしちゃってるせいで)中身のない議論が延々行われている、というのが筆者の見方です。


ちなみに筆者は、リベラルにくわえて「TPPで亡国するぞ」とか垂れ流してたなんちゃって保守の人達も全部含めて“下翼”と呼んでいます。そもそも「自由競争したら日本人は負ける。日本人は規制で守らないといけない弱い民族だ」っていうのが保守なわけないでしょ(苦笑)。右でも左でもなく、いつもびくびく下ばっか気にしてるから下翼。わかりやすいですね。



城繁幸氏が最初に造語したのかはいざ知らず、蚊居肢ブログ起源語ではまったくない(もっとも私は「下翼」という語を好んでいるが)。Grokさん、お分かりだろうか。


そもそも私は政治を好まないタチである。が、この数年のあいだ「止むえず」政治に首を突っ込んでいる。


私は政治を好まない。しかし戦争とともに政治の方が、いわば土足で私の世界のなかに踏みこんできた。(加藤周一「現代の政治的意味」1979年)

けだし政治的意味をもたない文化というものはない。獄中のグラムシも書いていたように、文化は権力の道具であるか、権力を批判する道具であるか、どちらかでしかないだろう。(加藤周一「野上弥生子日記私註」1987)


………………


いずれにせよ、現在、世界的に新たな政治ボキャブラリーが必要なことは間違いない。



◾️ジェフリー・サックス「和平計画の破綻は、私たち全員が殺される可能性があることだ」

 Blowing Up Peace Plans Can Get Us All KILLED | Jeffrey Sachs、 2024年6月22日

まず第一に、私は今この公の議論において『極右』が何を意味するのかさえ知りません。

いわゆる極右の多くは戦争を止めたいと考えている。

かつては極右は軍国主義的だったが、今は緑の党です。

ヨーロッパで最も軍国主義的な政党はどこでしょうか?それはドイツの緑の党です。

では、これらのラベルはもはや何を意味するのでしょうか?意味がありません。

First of all, I don't even know what 'far right' means in this public debate right now.

Much of the so-called far right wants to stop the war.

It used to be the far right was militaristic; now it's the Greens.

Who's the most militaristic party in Europe? It's the Greens of Germany.

So what do these labels even mean anymore? They make no sense.



◾️マイケル・ハドソン「新たな政治ボキャブラリーの必要性」

The Need for a New Political Vocabulary by Michael Hudson July 6, 2024

伝統的な政治的左翼の意味での「左翼」政党はもはや存在しない


かつての左翼政党は中道主義者の仲間入りをし、親米新自由主義者となった。 東ドイツのザーラ・ヴァーゲンクネヒト党を除けば、新しいナショナリスト政党に対抗する旧来の左翼政党は存在しない。 「左翼」はもはや、私が育った1950年代のようには存在しない。

There are no “left-wing” parties in the traditional meaning of the political left


The former left parties have joined the centrists, becoming pro-U.S. neoliberals. There is no counterpart on the old left to the new nationalist parties, except for Sara Wagenknecht’s party in East Germany. The “left” no longer exists in the way that it did when I was growing up in the 1950s.

〔・・・〕

過激な右翼政党と呼ばれていたものが今やポピュリスト的反戦政党になっている


「極右」と呼ばれる人たちは、かつて「左翼」と呼ばれていた政策を(少なくとも選挙戦のレトリックでは)支持している。戦争に反対し、国内の労働者や農民の経済状況を改善する。 かつての左翼がそうであったように、右翼の主な支持層は若い有権者である。

What are called extremist right-wing parties are now the populist anti-war parties


What is called the “far right” is supporting (at least in campaign rhetoric) policies that used to be called “left,” opposing war and improving the economic conditions of domestic labor and farmers – but not those of immigrants. And as was the case with the old left, the right’s main supporters are the younger voters.

〔・・・〕

右翼と左翼という旧来の区分は無意味になった。 最近の「極右」と呼ばれる政党の台頭は、アメリカ/NATOによる対ロシア・ウクライナ支援、特にその支援が欧州経済に及ぼす影響に対する広範な民衆の反発を反映している。 伝統的に、反戦政策は左翼的であったが、ヨーロッパの「中道左派」政党は、アメリカの戦争推進の「後ろからの指導」(そしてしばしばテーブルの下での指導)に従っている。 これは国際主義的なスタンスとして提示されているが、一極集中、アメリカ中心主義になっている。 欧州諸国は独立した発言力を持たない。


過去の規範からの根本的な脱却であることが判明したのは、世界情勢における一極支配を維持しようとするアメリカの試みに沿って、NATOが防衛的同盟から攻撃的同盟へと変貌を遂げたことにヨーロッパが追随したことである。 アメリカによるロシアと中国への制裁に参加し、自国の兵器庫を空にしてウクライナに武器を送り、ロシア経済を疲弊させようとしたことは、ロシアを傷つけるどころか、むしろ強化した。 制裁は自国の農業と産業を守る壁として機能し、輸入を回避する投資につながった。 しかし、制裁はヨーロッパ、特にドイツを苦しめている。

The old division between right and left parties has become meaningless. The recent rise in parties described as “far right” reflects the widespread popular opposition to the US/NATO support of Ukraine against Russia, and especially to the consequences for European economies of that support. Traditionally, anti-war policies have been left-wing, but Europe’s “center-left” parties are following America’s pro-war “leadership from behind” (and often under the table). This is presented as an internationalist stance, but it has become unipolar and U.S.-centered. European countries have no independent voice.


What turns out to be a radical break from past norms is Europe following NATO’s transformation from a defensive alliance to an offensive alliance in keeping with U.S. attempts to maintain its unipolar dominance of world affairs. Joining America’s sanctions on Russia and China, and emptying out their own arsenals to send weapons to Ukraine to try and bleed the Russian economy has not hurt Russia, but strengthened it. The sanctions have acted as a protective wall for its own agriculture and industry, leading to import-displacing investment. But the sanctions have hurt Europe, especially Germany.