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2020年5月14日木曜日

コロナ後の悪夢のシナリオ


マクロ的には今回の危機は、世界的な過剰貯蓄を背景とする「低金利と低インフレ」という近年の世界的傾向を終わらせる可能性がある。感染症対策のため世界中で巨額の財政支出が実行され、過剰貯蓄は減少する。コロナ危機後の世界では、金利が正常化して80年代ごろの水準に戻るかもしれない。一方、各国政府は想定外の巨大債務を抱えることになる。「政府債務が極端に増えればインフレになる」ことは歴史の経験則だ。世界中で財政インフレの実験が始まることになる。(コロナショック後の構造変化を見据えた給付のあり方―慶応大学小林慶一郎教授ーー日経新聞経済教室、2020年4月15日


これはあくまでひとりの「有能な」経済学者小林慶一郎氏の想定だが、仮に本当に80年代並みの水準に金利が正常化するとしよう。




ーー80年代の公債金利は7%前後である。

2019年時点で、地方債も含めた長期債務残高は1069兆円。




今年コロナ債務が発生しているの少なく見積もっても現在1100兆円。この金利が7%になってしまったらーー長期国債(ほとんどが10年債)は買い替えがあるのですぐには7%にはならないが5年で3.5%にはなるーー、1100兆円✖️ 3.5%≒39兆円の利払いになってしまう。現在、9兆円弱の利払費である(先の図参照)。


(※追記、後に調べたら、2020年3月末は1114兆円のようであり、いくら過小評価の計算だが大筋に変わりはない。)


ここでは仮に30兆円の利払増としよう。消費税1%は 約2.5兆円。これだけで単純計算したら、消費税12%分の借金が毎年増えてしまう。だがこれだけではない。ただでさえ大幅に不足している歳入歳出収支のための国債発行以外に、利払・償還費の国債費のための赤字国債増発もせねばならず、国債残高は雪だるま式に増え続ける。これはもはや年度予算が組めなくなってしまう事態である。

最低限、下記の図の利払費8.9兆円の数字が30兆円になり40兆円になり、金利水準が7%のままなら10年後には80兆円近くになっていくのである(本当は国債残高総額が増えていくのでさらに多額の増となり、現在15兆円弱の国債償還費も大幅に増える筈である)。



(資料財務省 令和元年10月」PDF )


このように日本の財政とは長期金利の現在の異常低率にのみ支えられているのである(短期金利は日銀が決め、長期金利は市場が決めるという定式がある)。金利が正常化したらハイパーインフレ等が起こるというのは既にコロナ禍以前から経済学者たちが怖れていることである(参照)。

こういったことを今更言っても仕様がない。とはいえインフレがお嫌いなかたは、政府債務の異常低金利率継続をせいいっぱい神様にお祈りされたし。

……………

なおコロナ禍以前に、志位和夫なる下翼党の党首が内政干渉とのたまう国債通貨基金等の提案は次の通りだった。







国際通貨基金(IMF)の概要 2018年4月19日
国際通貨制度の安定を維持し、危機を防止するために、IMFは各加盟国の政策や、国・地域、そして世界的な経済・金融の状況を、サーベイランス(政策監視)と呼ばれる制度を通じてモニタリングしています。IMFは加盟国に対し政策助言を行い、経済の安定性強化、経済・金融危機に対する脆弱性の軽減、さらには生活水準の向上を目指す政策を推奨します。


いくら下翼党首でもIMFの役割ぐらいは知っておくべきではなかろうか。そして日本の財政崩壊は日本だけの問題ではなく世界の問題だということぐらいは。



(日本の財政関係資料財務省 令和元年10月」PDF )





そもそも下翼の方々は「コロナ補償」をフリーランチと勘違いされているようで、そうではなくコロナ後に国民は税金で返すということである。事実、東北大震災における債務は、所得税増などによって(当初は法人税も含む)、25年かけて返済し続けている。




FRBが追加策を検討、失業率「今後1カ月がピーク」 パウエル議長が講演
パウエル氏は「長期的な経済のダメージを避けるには、追加の財政出動が有効だ」とも述べ、米政権と連邦議会にさらなる経済対策の発動も要求した。「FRBの緊急資金供給はあくまで融資であって、歳出ではない」と指摘。企業が投資や雇用を積み増すには、減税や補助金などの財政政策によって、産業界の資金余力そのものを高める必要があると強調した。



みなさん、コロナ後は、老いも若きもせいいっぱい税金を払って、人間らしい社会を維持しましょう。






老いから税金を取るには消費税か高インフレしかありません。

増税が難しければ、インフレ(による実質的な増税)しか途が残されていない恐れがあります。(池尾和人「このままでは将来、日本は深刻なインフレに直面する」2015年)


なぜこんなにたくさんいる高齢者の負担免除をするなどということがありうるのか?






コロナ後は、現役世代だけで負担するのではなく、引退世代の金融資産を貪り喰いましょう!


これまでの社会保障政策を長期的に振り返ると、引退世代の人数が増える分以上に現役世代の負担率を上昇させながら、引退世代の生活水準を向上させてきた。引退後の生活に余裕と潤いがあるのは素晴らしいことだが、「超」がつく少子高齢化の下では、現役世代 1 人当たりで支えなければならない引退世代の人数が急速に増えるから、引退世代の生活水準を維持するだけでも現役世代の負担が大きく増えていく。そうなれば、これまでのように引退世代の生活水準を向上させることは難しくなる。 …

日本の財政は、世界一の超高齢社会の運営をしていくにあたり、極めて低い国民負担率と潤沢な引退層向け社会保障給付という点で最大の問題を抱えてしまっている。つまり、困窮した現役層への移転支出や将来への投資ではなく、引退層への資金移転のために財政赤字が大きいという特徴を有している。引退世代向けに偏重した社会保障制度をもっと効率化し、一定の負担増を求める必要性は、経常収支が赤字か黒字かとは関係がない。 (大和総研「超高齢日本の 30 年展望  持続可能な社会保障システムを目指し挑戦する日本―未来への責任 」理事長 武藤敏郎 監修 、2013 年5 月 14 日)


右から左までの下翼党がなぜこういう当たり前の政策を提案できないかというと、引退世代は彼らの最大の票田だからです。いわゆるシルバーデモクラシーが現役世代をいっそう苦しめているのです。

還暦すぎのわたくしがこのように「真理」を言い得る幸運を持っているのは、海外に住んでいるせいであり、日本に住んでいたら口が裂けてもいいえなかったでしょう。