このブログを検索

2024年1月12日金曜日

10年後の心もとない期待

 

私はこの数年、フロイトラカン理論の核として「固着」FIXIERUNGを強調しているが、この固着についてはニューラカニアンスクール(NLS)が会議の資料として、フロイト著作集から重要な記述をほとんどすべてーー抜けてるのももちろんあるがーー拾っているのがネットに落ちているよ、


NLS Biblio : FREUD - FIXIERUNG 2022


FIXIERUNG IN DEN GESAMMELTEN WERKEN VON SIGMUND FREUD


これは2022年のもので、ラカニアンプロパでもフロイトの固着についていまだ十分には把握していない証拠だね。

ジャック=アラン・ミレールが次のように言ってからそれぞれのメンバーはようやくまともに勉強し始めているんだよ。

分析経験の基盤は厳密にフロイトが「固着 Fixierung」と呼んだものである[fondée dans l'expérience analytique, et précisément dans ce que Freud appelait Fixierung, la fixation. ](J.-A. MILLER, L'Être et l'Un, 30/03/2011)

享楽は欲望とは異なり、固着された点である。享楽は可動機能はない。享楽はリビドーの非可動機能である[La jouissance, contrairement au désir, c'est un point fixe. Ce n'est pas une fonction mobile, c'est la fonction immobile de la libido]. (J.-A. Miller, Choses de finesse en psychanalyse, 26 novembre 2008)


後者は次のフロイトの言い換え。

人の生の重要な特徴はリビドーの可動性であり、リビドーが容易にひとつの対象から他の対象へと移行することである。反対に、或る対象へのリビドーの固着があり、それは生を通して存続する。Ein im Leben wichtiger Charakter ist die Beweglichkeit der Libido, die Leichtigkeit, mit der sie von einem Objekt auf andere Objekte übergeht. Im Gegensatz hiezu steht die Fixierung der Libido an bestimmte Objekte, die oft durchs Leben anhält. (フロイト『精神分析概説』第2章、1939年)



実際、フロイト理論の核心を把握するのに仏主流ラカン派(=フロイト大義派)でも100年かかったのさ。例えば女性の享楽も現実界の症状サントームも両方とも固着の反復の症状にほかならない。


さらに日本言論界において寝言が言われ続けている超自我自体、最後のフロイトにおいて固着。

超自我が設置された時、攻撃欲動の相当量は自我の内部に固着され、そこで自己破壊的に作用する[Mit der Einsetzung des Überichs werden ansehnliche Beträge des Aggressionstriebes im Innern des Ichs fixiert und wirken dort selbstzerstörend. ](フロイト『精神分析概説』第2章、1939年)


でも日本では、固着がまともに論じられるようになるのは、あと10年ぐらいかかるんじゃないかね。そのときまで日本フロイトラカン派がまだ生き残っていれば、の話だが。いずれにせよ、現在の日本フロイトラカン業界の注釈書は全滅だね、焚書処分にしたほうがいいよ。