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2025年3月18日火曜日

トランプの寝言ーー「選挙で選ばれていない官僚支配の終わり」



▶︎動画


《選挙で選ばれていない官僚支配の時代は終わった[The days of rule by unelected bureaucrats are over]》はタテマエとしてはよいとしても、マネーに支配された政治家を終わらせなかったら同じことだ。選挙で選ばれた政治家は、実際はマネーで選ばれている。


◼️EU Must Trim Welfare to Fund Warfare, By Michael Hudson , March 17, 2025

マイケル・ハドソン:米国政府は確かに億万長者にコントロールされている、シチズンズ・ユナイテッドと、選挙が選挙資金提供者の機能であるという事実のせいで。

The government is indeed controlled by the billionaires, thanks to Citizens United and the fact that elections are a function of campaign donors. 


少なくともアメリカの場合、「選挙で選ばれた政治家」はマネーの奴隷である。政治家を選挙で選ぶ一般大衆は、既に常に、メディアに洗脳されている。そして主流メディアを支配しているのは選挙で選ばれていない「既得権益層」ーーミアシャイマーのディープステートの定義であるーー、あるいは選挙で選ばれていない億万長者・金融資本家だ。



◾️マイケル・ハドソン「合策された民主主義」

The Democracy Collaborative By Michael Hudson, March 28, 2017

政党がどのように組織されるか。 方法は2つある。ひとつは民主主義国家で有権者の支持を得ること、もうひとつは大口献金者と資金調達者から資金を得ることだ。 資金調達者はウォール街にいる。 民主党の戦略ーー2月21日の民主党全国委員会代表選挙に出馬した議員たちーーは、資金調達の鍵はテレビだと言っていた。 人心を掌握するためにテレビの時間を買うには、多額の献金が必要だ。 その資金は主にウォール街、1%の人々からもたらされる。 だから、テレビの時間を買ったり、フォーカスグループにお金を出したりする資金を1%に依存しているとしたら、驚くことに1%は、99%の利益ではなく、自分たちの利益だけを代表しようとしていることになる。

党が、大口献金者からテレビ放映のための資金を最も多く集められる候補者や綱領を目指す戦略をとれば、大口献金者の党になってしまう。 ウォール街の党だ。

…on how the political party is going to be organized. There are two ways: One is to get popular support of voters in a democracy; the other is to get funding from big donors and fundraisers. The fundraisers are on Wall Street. The Democratic Party strategy – and you saw this by members running for the head of the Democratic National Committee on February 21 – they were saying the key to funding is television. Buying television time to control people’s minds takes big contributions of money. The money comes mainly from Wall Street, from the 1%. So if you’re dependent on the 1% to give the money to buy television time and to pay for focus groups, then the 1% surprisingly enough are only going to represent their own interest, not that of the 99%.

Once you have a strategy that the party is geared towards what candidates and platform can raise the most money for television from big contributors, you’re going to become the party of these big contributors. Of Wall Street.


1%の利益のためのウォール街の党とはつまりは金融資本家の党だ、ーー《マイケル・ハドソン:金融資本主義とは、上位1%に属する人がいかにしてタダ飯を手に入れるかということだ。〔・・・〕基本的に金融資本主義とは、詐欺師が 99 パーセントの人々からお金を奪い、自分の手に収めることで金持ちになる機会を与えることである[finance capitalism is all about how to get a free lunch if you're a member of the one percent.(…) that’s basically what finance capitalism is: opportunity for rip-off artists to get rich uh by taking money away from the 99 percent, into their own hands.]》(Finance Capitalism's Self-Destructive Nature By Michael Hudson  July 18, 2022)


基本的にはこれが現在のアメリカの政治システムである。



◾️「エリート帝国主義の白黒」 ジル・スタインとマイケル・ハドソン 2024年5月18日

The Black & White of Elite Imperialism with Jill Stein  by MICHAEL HUDSON May 18, 2024

ジル・スタイン:

……私たちは今、経済エリートが政治エリートに命令を下しているような悪循環の中にいます。そして多くの場合、経済エリート自身が政治エリートであり、私たちの政治システムに入り込む億万長者なのです。そして、政治システムの内部で、彼らは富と寡頭政治家の利益をさらに集中させる政策を生み出しているのです。つまり、私たちは現在、寡頭政治と帝国主義の状況にあります。

JILL STEIN:… we’re now in this like vicious feedback loop right now, where the economic elites are basically giving the marching orders to the political elites. And in many cases, they are the political elites themselves, you know, the billionaires who enter into our political system, you know. And so inside of the political system, they are then generating the policies that further concentrate wealth and the advantages of the oligarchs, you know. So we’re in a situation right now of oligarchy and empire.〔・・・〕

マイケル・ハドソン: そうですね、基本的に本当の有権者は寄付者層、つまりあなたが言った億万長者です。なぜなら、彼らは候補者を支援するために資金を提供することができるからです。お金でテレビの時間を買い、投票用紙に署名を集める人を雇うのです。 オリガルヒのための民主主義とも言えますが、それは寡頭政治と呼ばれるものです。 選挙で選ばれたわけでもない億万長者たちが、誰を支持するかによって予備選の投票権を決めるだけでなく、CIA、NSA、FBI、ディープステートのような秘密政府も存在します。

MICHAEL HUDSON: Well, basically the real voters are the donor class, the billionaires that you’ve mentioned, because they can give money to back the candidates. And money is what buys television time, buys people to get the signatures on the ballot. And you could say it’s a democracy for the oligarchs, but that’s called oligarchy. And not only do these sort of unelected billionaires end up deciding who gets to be on the ticket in the primaries, depending on who they’re backed, but there’s also the blob, the secret government, the damage of the CIA, NSA, FBI, and the deep state.



ここで冒頭のマイケル・ハドソンの云う《米国政府は確かに億万長者にコントロールされている、シチズンズ・ユナイテッドと、選挙が選挙資金提供者の機能であるという事実のせいで。》に戻って、シチズンズ・ユナイテッド[Citizens United]中心に確認しておこう。2014年にマイダンクーデターとウクライナのネオナチについてきわめて優れた分析をした元IMF日本代表理事小手川大助の2024年のコラムからである。



◼️小手川大助 「米国の選挙制度の現状について」2024.02.21

年末から燃え上がった日本での政治資金問題について米国の友人から質問を受けましたが、答えるにあたり、「安倍派が5年間でキックバックした金額が5億円(約300万USドル)」と述べたところ、先方は金額が小さいことに驚き、「冗談でしょ!」、「日本の政治はそんなにお金がかからないの!」「米国の選挙に関係する金額は少なくともその千倍だ!」との声が上がったことに刺激されて、下記のように、米国の選挙の現状について調べてみました。以下、米国の専門家からの聞き取りに基づく報告です。

1. 序

過去50年間に米国の政治運動に関する資金調達を対象とする規制は大きな変化を遂げてきましたが、結果的には大統領選挙と議会選挙におけるお金の役割を大幅に増やすという結果になりました。このような動きは、ウォーターゲート事件の影響から、選挙資金に大きな制限を課し、四半期ごとの開示を義務付け、新法を執行するために連邦選挙委員会(FEC)を設立するという従来の努力に対し、大きな影を落としています。

転機となったのは2010年に、米国最高裁判所が「シチズンズ・ユナイテッド対FEC」の裁判で画期的な判決を下したことでした。 決定的に重要なのは、公式の選挙運動委員会とは別の資金であることを条件に、この判決により、スーパーPAC(政治活動委員会)が連邦政府機関の候補者の支援のために、無制限に資金を費やすことができる抜け穴が作られたことでした。


上記判決ではスーパーPACの献金者の開示を義務付けられましたが、その後の最高裁判所の判例により、非課税の公益団体(献金者の開示を義務付けられていない)がスーパーPACに資金を提供できることになりました。その結果、スーパーPACへの大口寄付者の身元を隠すことが可能になり、この手段は「ダークプール」と呼ばれるようになりました。この「ダークプール」のために、米国連邦選挙において、外国からの資金提供に対し法的規制を強制することは今や不可能となっています。

シチズンズ・ユナイテッドの判決後、大企業、富裕層、労働組合、その他の特別利益団体は、議会選挙や大統領選挙に巨額の資金を注ぎ込みました。例えば:

  • 2010年から2018年の間に、スーパーPACは29億ドル(約4300億円)のキャンペーン献金を提供しました。
  • 2018年には、スーパーPACの献金総額の78%がわずか100人の個人から寄せられました。
  • 2020年の選挙では、大統領、下院、上院の選挙運動に合計144億ドル(約2兆1000億円)が費やされ、2016年の2倍の支出額と記録なりました。2018年の連邦中間選挙での総額は57億ドル(約8400億円)でした。


〔・・・〕


6. 米国選挙での支出の実績

2020年の選挙(大統領選挙、上院選挙、下院選挙)の支出総額は歴史上最高額の144億ドル(約2兆1200億円)となりました。個別の部門の内訳は以下の通りです。

  • バイデン大統領は10億ドル(約1470億円)を集めた史上初の大統領候補でした。
  • ドナルド・トランプは7億7400万ドル(約1140億円)を集めましたが、少額(200ドル未満)の献金者からの献金額が史上最大でした。
  • 大統領選挙の候補者達が集めた資金の総額は57億ドル(約8400億円)でした。

上院と下院の選挙に関する献金額も記録を打ち立てました。

  • 下院435議席と上院の33議席の候補者達は総額87億ドル(約1兆2800億円)の献金を集めました。
  • 歴史上最も費用がかかった上院選10のうち9が2020年の上院選で記録されました。ジョージア州上院議員選挙(両議席とも空席)と決選投票の費用は8億5000万ドル(約1250億円)で史上最高を記録しましたが、資金の多くは州外の献金者からでした。(なお、両選挙では民主党の候補者が勝利し、その結果民主党が上院で過半数を占めることになりました。)
  • 2020年の上院議員選挙の候補者の委員会による総支出は、

民主党候補者 11億ドル(約1600億円)

共和党候補者 7.52億ドル(約1105億円)

以上のように両党の候補者は一人当たり平均で2800万ドル(約41億円)を集めたことになります。

  • 2020年の下院議員選挙の候補者の委員会による総支出は、

民主党候補者 8億9800万ドル(約1320億円)

共和党候補者 7億6300万ドル(約1120億円)

以上のように両党の候補者は一人当たり平均で190万ドル(約2.8億円)を集めたことになります。

  • 2020年の選挙で二大政党、候補者の委員会、スーパーPACそして「ダークプール」による総支出額は史上最高だった。その内訳は、

民主党 84億ドル(約1兆2300億円)

共和党 53億ドル(約7800億円)

残りは第3者が集めた7億ドル(約1000億円)

でした。

  • 献金者のうちで上位100人の億万長者の献金者の献金の殆ど全ては、個人寄付に金額制限を設けていないスーパーPACを通じ行われた。その額は16億ドル(2350億円)でした。なおスーパーPACによる献金の総額は33億ドル(約4850億円)でした。
  • 上院院内総務のミッチ・マコーネル(共和党)の上院リーダーシップ基金の調達額は2億9400万ドル(約432億円)であり、チャールズ・シューマー(民主党)の上院多数派PACの調達額は2億3000万ドル(約338億円)でした。
  • 2020年選挙の支出総額144億ドルは過去最高額だった2016年の選挙の際の2倍でした。


(上記のデータは全て、連邦選挙委員会(FEC)の2024年の四半期報告に基づいています)





以上、米国民主主義はマネーに支配されているのである。


民主主義の極地は、「民意」という名の下に全体主義の形を取り、全体主義の極地は、国家間の境界を越えた超資本主義の形を取ります。

ここで、無主主義という観念を導入した方がいいと思います。今は民主主義が尖鋭化して全体主義になった状況を考えた方が世界を見易いですが、独裁者がいるかと問われれば、 いないでしょう。主人はマネーかもしれないんです。(古井由吉『新潮 45』2012 年 1 月号 片山杜秀との対談)