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2023年5月6日土曜日

三つのヤバい、あるいは世界債券危機の訪れ

 ダリオが鮮明に言っているね、世界債券危機の訪れを。


➡︎邦訳動画



つまり本日付の小幡績氏の記事の「三つのヤバい」だね


3つの「世界同時多発『ヤバい』」が起きている

実はアメリカよりも日本のほうがもっと深刻だ


小幡 績 : 慶應義塾大学大学院教授  2023/05/06

今、世界では3つの「同時多発『ヤバい』」が起きている。

「3つの事件」の影響は深刻だ

ヤバいその①:アメリカのファースト・リパブリック・バンクが5月1日に破綻した(日時はことわりのあるものを除き現地時間)。「しかし、JPモルガン・チェースが買収した。金融システムは大丈夫だし、金融市場もこれで落ち着く」という有識者のコメントが「ヤバい」。

これはまったくの間違いだ。これからアメリカ、そして世界の金融市場は静かにどんどん悪くなる。

ヤバいその②:5月3日にFED(アメリカの中央銀行)が、0.25%の利上げを発表、「今後の利上げに対しては中立的」というメッセージを出した。だが、株式市場や債券市場関係者の多くは、それでも「今後は年内に利下げに転じるはずだ」と解釈している。これもまったくの間違いだ。

つねに願望で動く株式市場が、わざと誤解して盛り上がっているのはいつもどおりだが、合理的で理論派のはずの債券市場も、理屈でなく願望で動いており、利下げ願望を織り込んでいる。債券市場の投資家まで願望で動いているのは相当ヤバい。株式・債券の暴落は今後何度でも起きる。

ヤバいその③:日本銀行の植田和男新総裁がすばらしい人物であることは私も知っている。だが、植田新総裁という人物および、彼の初の金融政策決定会合後の記者会見を、世間が現状であまりに礼賛しているのがヤバい。

彼がどんなにすばらしい人格者だとしても、どんなに優秀でも、それと無関係に、日本経済も日本金融市場も国債市場もすでに事実として追い込まれており、身動きできない。「ソフトランディング」はできない。その事実からほとんど目をそらしているに等しい日本社会、日本の論壇がヤバい。

今挙げたように、この1週間前後のうちに、ほぼ同時に起きた「3つの事件」の影響は深刻で根深い。なぜなら、こんなにも重要な3つの問題が同時に噴出したのに、投資家たちは、目をつぶるばかりか、正反対の楽観的な方向に解釈して逃げ切ろうとしているからだ。

〔・・・〕


➡︎とっても悠長な(?)植田日銀


小幡氏は当初、植田日銀新総裁の評価が甘かったのだが、ようやくはっきり言うようになった。ここでは第一、第二のヤバいは割愛して第三のヤバさの具体的指摘箇所だけ掲げよう。


〔・・・〕 植田氏はハト派、つまり、無理に金融緩和をやめないという考え方であることはわかっていた。しかし、彼は誠実さのあまり、「これまでの金融政策は妥当」、つまり「いわゆるイールドカーブコントロール(YCC)も副作用がある政策であることは事実だが、現在の状況からいってYCCは適切だ」と言ってしまったのである。


一連の発言に、「最短で行けば、初回の金融政策決定会合(4月27~28日)からYCCの変更まであるかもしれない」と意気込んでいた海外勢は拍子抜けし、ドル円相場は急落、円安に振れた。


私も、植田氏は穏当かつ慎重であるから、いきなり政策変更はしないと思ったし、今後についてもつねに市場を出し抜くようなことはしないと思われた。それゆえ、「YCCの変更が必要かどうかを、政策決定会合メンバーや日本銀行スタッフなどと十分検討してから行う」というスタンスを取ると思っていた。


政策変更は副作用が顕在化してからでは遅すぎる

「これまでの金融緩和政策の効果などの検討を1年から1年半で行う」と表明したではないか、という反論もあるだろう。こうした発言は、見直しを検討するという意味では予想どおりなのだが、それでは次回のYCCの変更にはならない。

しかも、これから先の検討は「目先の金融政策の変更の是非のためではなく、中長期的な政策検討のための材料」ということだった。

確かに、逆に言えば、この検討とは無関係にYCCの変更はありうるわけだ。しかし、植田氏の説明から行けば「現状YCCは妥当、しかし副作用が存在し、現在は許容範囲だが、それを超えれば変更する」ということだった。

それでは間に合わないのだ。YCCの性格からいって、副作用が明らかになったときには、市場から総攻撃を受け、政策変更が難しくなっているはずだ。しかし、それでも変更しないといけないから、金融市場に大きなダメージと混乱をもたらすことを甘受して、変更することになる。

要は、就任するや否や、「私は必ず失敗する、失敗してYCCを放棄することになる」と宣言し、それがわかっていながら、それを回避しない、と自らの手を縛ってしまったのだ。なんということだ。


しかし、これだけならYCC修正の混乱だけの問題で済む。絶望的なのは、植田氏まで「なんとしても物価上昇率2%を安定的に達成するまで、金融緩和を続けたい」と宣言してしまったのだ。


さらに、賃金上昇を伴う好循環、つまり、賃金上昇率がインフレ率を上回り、実質賃金が安定的に上昇するような状況になるまで、金融緩和を続ける、と言ってしまったのだ。


もう終わりだ。

〔・・・〕




この三つ目のヤバいーー黒田日銀を引き継いだ植田日銀新総裁のヤバさーーは、「日本のダリオ」藤巻健史氏が言い続けていることでもある(もっとも私は藤巻氏に対していくらの批判がある、基軸通貨ドル崩壊の足音に耳栓をしているように見えることだ)。




吉川洋が2014年の時点でオカルトだと言った岩田日銀副総裁である、《岩田さんの考え……私はオカルトだと思う》(「物価は足し算だ」 吉川洋・東京大学教授  インタビュー 2014/10/25)。自らのオカルトぶりを今頃悟られてもなあ〜




日銀保有国債は毎年100数十兆円の満期がくる、つまりその額の借り換えが必要(令和4年度は148兆円の借り換えーー消費税1%約2.5 兆円弱であり、消費税換算70%相当額)。



実際はデフォルトではなくハイパーインフレだろうが、神風が吹く以外、日本が救われる道はないね。




(消費税100%にしたらどうだろ? 債務がいくらかまだかわいいものだった2015年時点でさえ「消費税、最終的に最高32%との政府試算」(小黒一正)という話がされていたわけで、現在では消費税100%は極論ではないーー《2030年までに増税しない場合、100パーセント以上の消費税がなければ財政が持続不可能な事態に陥ってしまう。》(同小黒一正)ーーこれは単なる小学校の算数の問題であり、日本言論界には幼稚園児並みの経済評論家(私は彼らを「打ち出の小槌派」とときに呼んできた)が跳梁跋扈してこれを否定しているだけである)

私は何度も言ってきたが、ハイパーインフレ時の最大の問題は最終的には「飢餓」だからな(➡︎ハイパーインフレ文献)。是非とも飢餓対策の準備をしとかないとな。