巷の「消費税絶対悪カルト」は、結局、札束刷り刷り派に行き着くようだな
ま、しょうがないよ。そもそも安倍晋三がこのたぐいだったんだから。
「子どもたちの世代にツケを回すなという批判がずっと安倍政権にあったが、その批判は正しくないんです。なぜかというとコロナ対策においては政府・日本銀行連合軍でやっていますが、政府が発行する国債は日銀がほぼ全部買い取ってくれています」 「みなさん、どうやって日銀は政府が出す巨大な国債を買うと思います? どこかのお金を借りてくると思ってますか。それは違います。紙とインクでお札を刷るんです。20円で1万円札が出来るんです」(安倍晋三新潟県三条市での講演ーー2021年7月10日) |
日本をひどく愛し憂えた世界三大投資家ひとりジム・ロジャーズ曰く、
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◾️ジム・ロジャーズインタビュー「アベノミクスの行方」ロイター通信 我謝京子氏 2014年2月25日 |
安倍氏は大惨事を起こした人物として歴史に名を残すことになるでしょう。 これから20年後を振り返った時に、彼が日本を崩壊させた人物だと皆が気づくことになるでしょう。 アベノミクスには三本の矢がありますが、3本目の矢は日本の背中に向かってくるでしょう。日本を崩壊させることになるでしょう。紙幣を刷る事と通貨価値を下げる事で経済を回復させることは絶対できない。長期的にも、中期的でさえ無理です。 |
で、表面的にはインテリっぽく振る舞っているつもりらしい「庶民の味方の心優しい」消費税減税派のキミたちも結局、この口なんだよ。日本に大惨事を起こした国民集団としての日本人の典型として歴史に刻まれるだろうね。
でもヤムエナイ。貨幣メカニズムは、精神の中流階級には難しいから。
学者というものは、精神の中流階級に属している以上、真の偉大な問題や疑問符を直視するのにはまるで向いていないということは、階級序列の法則から言って当然の帰結である。加えて、彼らの気概、また彼らの眼光は、とうていそこには及ばない。Es folgt aus den Gesetzen der Rangordnung, dass Gelehrte, insofern sie dem geistigen Mittelstande zugehören, die eigentlichen grossen Probleme und Fragezeichen gar nicht in Sicht bekommen dürfen: (ニーチェ『悦ばしき知識』第373番、1882年) |
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ーーときに精神の下流階級のほうがまともな場合さえあるからな。
ま、仮にアメリカと日本の「紙幣刷り刷り」を比較するなら、基軸通貨か否かの問題に収斂するのだが、一見まともに見える経済学者でさえ誤解している人が多い。
非基軸通貨国は、自国の生産に見合った額の自国通貨しか流通させることはできないのである。それ以上流通させても、インフレーションになるだけである。(岩井克人『二十一世紀の資本主義論』2000年) |
ドルが「基軸通貨」であることは、だれもが知っている。だが、それがほんとうはどういう意味であるかは、経済学者ですら誤解していることが多い。 たとえば、世界中のひとびとがアメリカの製品を買うためやアメリカの債券や株式を買うためにドルを保有しているというだけでは、それがいくら大量であっても、ドルのことを基軸通貨とはよばない。それは、たんにドルが国際性をもった通貨であるというにすぎない。その意味でならば、円もユーロも、程度の差はあれ、国際性をもっている。 ドルが基軸通貨であるとは、タイの商社がロシアの企業からキャビアやウオッカを買うとき、その支払いが、バーツでもなくルーブルでもなく、ドル建てでおこなわれるということであり、ブラジルの企業やブラジルの政府が韓国の銀行から借り入れをするとき、借入金も返済金もともに、ウォンでもレアルでもなく、ドル建てでおこなわれるということなのである。すなわち、それは、世界中の貿易取り引き(通常の商品の売買)や金融取り引き(金融商品の売買)が、直接アメリカが介在していない場合においても、アメリカの通貨であるドルを使っておこなわれているということなのである。(岩井克人『二十一世紀の資本主義論』2000年) |
このアメリカがこの今、ドル基軸通貨殺しを「無意識的に」実践中なんだ。
自国通貨と基軸通貨というドルの二重性は、アメリカに相反する政策を求めることになる。言うまでもなく各国の中央銀行は、自国の景気に応じて通貨の発行量を増減させる。しかしアメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は、国内だけでなく世界の経済情勢を踏まえて判断する必要がある点で、他国とは事情が異なる。 アメリカ国内の景気は過熱気味だが、世界的には不況が続いている状況を想定しよう。国内をみれば抑制的な通貨供給が求められるが、世界の景気のためには拡張的な通貨供給が要請され、そのバランスをとる必要がある。 基軸通貨の供給者であるFRBは、国内の中央銀行であると同時に、世界の中央銀行としての役割を果たす義務も負うのである。 言うまでもなく、 アメリカは基軸通貨のドルを持つことで多大な恩恵を受けている。FRBが発行するドルの七割近くは海外で流通するので、その額だけ外国製品を無料で輸入できることになる。 これが基軸通貨発行者のシニョリッジ(通貨発行益) である。 また、金融取引を為替リスクのないドル建てで行えるメリットは大きく、それゆえアメリカは国際金融の中心として多大な利益を得ている。 一方で、国際経済の安定のために自国の経済政策に一定の枠をはめねばならない状況は、そこだけを切り取れば、「世界のためにアメリカが犠牲になっている」というナラティブを生みやすい。例えば、基軸通貨であるドル需要の増加に応じてその供給量を増やせば、国際収支は必然的に赤字化する。しかし国内ではそれを過剰なドル高と捉え、国内産業の空洞化を起こしているとの短絡的な思考を生みやすい。事実、トランプ政権の掲げるアメリカ第一主義は、まさにそう思考している。だがそれは誤謬である。 |
(岩井克人「基軸通貨ドルと国際秩序」2025年3月31日、PDF) |
安倍晋三まわりにおバカな経済アドバイザーが揃っていたように、トランプまわりもおバカぶりは同様なんだろうよ。実際、米財務長官ベッセントやトランプ最高経済顧問スティーブン・ミランなどはネオコン宗教カルトとして「笑いの対象」にすぎない。
◼️マイケル・ハドソン「トランプによるメキシコそして全世界への国際収支戦争」 2025年1月24日 Trump's Balance-of-Payments War on Mexico, and the Whole World by Michael Hudson, January 24, 2025 |
鍵となるのは、ドナルド・トランプが脅す関税と貿易制裁が引き起こす国際収支の不均衡にある。ドナルド・トランプやその経済アドバイザーたちは、これらの政策が世界の通貨や貿易に与える影響を理解していないようだ。その結果、世界経済における金融的な破綻が避けられなくなる可能性が高い。 |
the key is to be found in the balance-of-payments effect of Trump’s threatened tariffs and trade sanctions. Neither Trump nor his economic advisors understand what damage their policy is threatening to cause by radically unbalancing the balance of payments and exchange rates throughout the world, making a financial rupture inevitable. |
要するに次の道をまっしぐらだろうねーー、《トランプ政権は、 ニクソン政権の失敗をより大規模な形で繰り返そうとしている。 フリードマンは自由主義経済の信奉者であり、市場に任せる政策提言を行ったが、トランプ政権は、関税の一方的な引き上げや海外からの投資規制など介入主義的な手段を厭わないので、ドルの基軸通貨からの離脱が成功する可能性ははるかに高い。仮にそうなれば、アメリカは基軸通貨国であることの巨大な恩恵を失い、本当の衰退が始まるだろう。 不幸にも世界経済は大恐慌に陥るだろう。事実、一九三〇年代の世界大恐慌は、基軸通貨がポンドからドルに移る空白期に起きたのである。》(岩井克人「基軸通貨ドルと国際秩序」2025年3月31日)
何はともあれーー大恐慌の話はさておきーー、プーチン曰くの《あなた方は自分の手でドルを殺しているのだ》をトランプ政権は実践中ってわけさ。
◾️プーチン、タッカー・カールソンインタビューより |
Vladimir Putin answered questions from Tucker Carlson, a journalist and founder of Tucker Carlson Network. February 9, 2024 The Kremlin, Moscow |
ウラジーミル・プーチン:ドルを外交闘争の道具として使うことは、米国の政治指導部が犯した最大の戦略的過ちの一つだ。 ドルはアメリカの権力の要だ。 ドルをいくら刷っても、すぐに世界中にばらまかれることは誰もがよく理解していると思う。 アメリカのインフレはごくわずかです。 インフレ率は3%か3.4%で、アメリカにとってはまったく許容範囲だと思う。 しかし、彼らは印刷を止めようとしない。 33兆ドルの負債は何を物語っているのでしょうか? それは排出量だ。 とはいえ、ドルは米国が世界中で権力を維持するための主要な武器だ。 政治指導者が米ドルを政治闘争の道具として使うことを決めたとたん、このアメリカの力に打撃が与えられた。 強い言葉は使いたくないが、これは愚かな行為であり、重大な過ちである。 |
Vladimir Putin: You know, to use the dollar as a tool of foreign policy struggle is one of the biggest strategic mistakes made by the US political leadership. The dollar is the cornerstone of the United States' power. I think everyone understands very well that, no matter how many dollars are printed, they are quickly dispersed all over the world. Inflation in the United States is minimal. It is about 3 or 3.4 percent, which is, I think, totally acceptable for the US. But they won't stop printing. What does the debt of 33 trillion dollars tell us about? It is about the emission. Nevertheless, it is the main weapon used by the United States to preserve its power across the world. As soon as the political leadership decided to use the US dollar as a tool of political struggle, a blow was dealt to this American power. I would not like to use any strong language, but it is a stupid thing to do, and a grave mistake. |
世界で起こっていることを見てみよう。 米国の同盟国でさえ、ドル準備金を縮小している。 それを見て、誰もが自分たちを守る方法を探し始める。 しかし、米国が特定の国に対して、取引制限や資産凍結などの制限的な措置を取ることは、重大な懸念を引き起こし、全世界にシグナルを送ることになる。 何があったのか? 2022年まで、ロシアの対外貿易取引の約80%は米ドルとユーロで行われていた。 米ドルは第三国との取引の約50%を占めていたが、現在は13%に減少している。 米ドルの使用を禁止したのは我々ではない。 米ドルでの取引を制限したのはアメリカの決定だ。 米国自身とその納税者の利益の観点から、これは完全に愚かなことだと思う。米国経済への打撃となり、世界における米国の力を弱めることになる。 |
Look at what is going on in the world. Even the United States' allies are now downsizing their dollar reserves. Seeing this, everyone starts looking for ways to protect themselves. But the fact that the United States applies restrictive measures to certain countries, such as placing restrictions on transactions, freezing assets, etc., causes grave concern and sends a signal to the whole world. What did we have here? Until 2022, about 80 percent of Russia's foreign trade transactions were made in US dollars and euros. US dollars accounted for approximately 50 percent of our transactions with third countries, while currently it is down to 13 percent. It was not us who banned the use of the US dollar, we had no such intention. It was the decision of the United States to restrict our transactions in US dollars. I think it is complete foolishness from the point of view of the interests of the United States itself and its taxpayers, as it damages the US economy, undermines the power of the United States across the world. |
ちなみに、人民元での取引は約3パーセントだった。 現在、私たちの取引の34パーセントはルーブルで行われており、人民元での取引も34パーセント強とほぼ同じである。 なぜアメリカはこのようなことをしたのか? 私の推測では、自信過剰でしかない。 おそらくロシアは完全な崩壊につながると考えたのだろうが、何も崩壊しなかった。 しかも、産油国を含む他の国々は、人民元での石油代金の支払いを考え、すでに受け入れている。 何が起こっているのか、気づいているのか、いないのか。 米国でこのことに気づいている人はいるのだろうか? あなた方はいったい何をしているのか? 自らを切り捨てているのだ。専門家は皆そう言っている。 米国の知的で思慮深い人々に、米国にとってドルが何を意味するか尋ねてみてほしい。 あなた方は自分の手でドルを殺しているのだ。 |
By the way, our transactions in yuan accounted for about 3 percent. Today, 34 percent of our transactions are made in Rubles, and about as much, a little over 34 percent, in Yuan. Why did the United States do this? My only guess is self-assurance. They probably thought it would lead to a full collapse, but nothing collapsed. Moreover, other countries, including oil producers, are thinking of and already accepting payments for oil in yuan. Do you even realize what is going on or not? Does anyone in the United States realize this? What are you doing? You are cutting yourself off… all experts say this. Ask any intelligent and thinking person in the United States what the dollar means for the US? You are killing it with your own hands. |
あとはーー大恐慌が起こるか否かはーーブリックス通貨がどの程度救いになるかだが、実はブリック通貨の本質は、今のところケインズの「バンコール(Bancor)」にすぎない。➤ 「BRICS通貨は存在しない。存在するのはBRICS中央銀行」
日本を代表するケインジアン、いや事実上、世界を代表するケインジアンの岩井克人ーー彼は30代でエール大学での傑出した研究で(不幸にも最先端すぎて)ノーベル経済学賞を取り損ない、失意のもとに東大に就職した人物だ(参照:カツ、おまえの仕事は、時代を二十年先駆けている)ーーこの岩井克人がブリックス通貨に触れさえしていないのは、おそらくいまだ機能する段階に至っていないと見做しているせいだ。
岩井克人もマルクス主義者マイケル・ハドソンもフリードマンを徹底的に馬鹿にしているのは同じだが、ーー《右派マネタリストであるシカゴ大学は、ミルトン・フリードマンと自由市場の非常に視野の狭い信奉者たちを、すべての主要な経済雑誌の指導部に据えた[The University of Chicago, the right-wing monetarists, got their acolytes, the very tunnel-visioned followers of Milton Friedman and the free markets, into the leadership of all of the major economic journals]》(How Private Banking Replaced Public MoneyBy Michael Hudson,April 8, 2025)ーー、ハドソンはかすかながらバンコールに救いを求めている。ここに奇妙な転倒がある。
他方、ラディカルマルキストの柄谷行人は端から諦めている、それは直近のインタビューでもそうだ、ーー《現在の世界は、資本主義(C)、国家(B)、ネーション=国民(A)が相互に補完するような、僕が資本=ネーション=国家と呼ぶ体制に支配されている。これは、必然的に戦争や恐慌を生みます。》(私の謎 柄谷行人回想録㉕ 2025.04.15)
最初の話に戻れば、日本の消費税絶対悪カルトを馬鹿にしても致し方ない、日本はもとより米国の中枢経済アドバイサーでさえも「突き詰めれば」似たような阿呆なんだから。どこもかしこも木瓜の花盛りってわけさ。ポストマルクス時代の最大の不幸だね。
問題は、戦争機械がいかに戦争を現実化するかということよりも、国家装置がいかに戦争を所有(盗用)するかということである [La question est donc moins celle de la réalisation de la guerre que de l'appropriation de la machine de guerre. C'est en même temps que l'appareil d'Etat s’approprie la machine de guerre]〔・・・〕 国家戦争を総力戦にする要因は資本主義と密接に関係している「les facteurs qui font de la guerre d'Etat une guerre totale sont étroitement liés au capitalisme ]。 現在の状況は絶望的である。世界的規模の戦争機械がまるでSFのようにますます強力に構成されている[Sans doute la situation actuelle est-elle désespérante. On a vu la machine de guerre mondiale se constituer de plus en plus fort, comme dans un récit de science-fiction ;](ドゥルーズ &ガタリ『千のプラトー』「遊牧論あるいは戦争機械』1980年) |
マルクスは間違っていたなどという主張を耳にする時、私には人が何を言いたいのか理解できない。マルクスは終わったなどと聞く時はなおさらだ。現在急を要する仕事は、世界市場とは何なのか、その変化は何なのかを分析することである。そのためにはマルクスにもう一度立ち返らなければならない。 Je ne comprends pas ce que les gens veulent dire quand ils prétendent que Marx s'est trompé. Et encore moins quand on dit que Marx est mort. Il y a des tâches urgentes aujourd'hui: il nous faut analyser ce qu'est le marché mondial, quelles sont ses transformations. Et pour ça, il faut passer par Marx:(ドゥルーズ「思い出すこと」死の2年前のインタビュー、1993年) |
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大恐慌については、「大破局は目に見えない」大半のムラビト日本人とは異なり、明らかに分裂病親和気質の古井由吉は何度もその訪れを予感していた。 |
近代の資本主義至上主義、あるいはリベラリズム、あるいは科学技術主義、これが限界期に入っていると思うんです。五年先か十年先か知りませんよ。僕はもういないんじゃないかと思いますけど。あらゆる意味の世界的な大恐慌が起こるんじゃないか。 (古井由吉「すばる」2015年9月号) |
しかし現在の苦境は、我が国ばかりでなく世界全体がひとつの限界域に、展開の限界に踏 み入りつつあるところから、来るのではないか。〔・・・〕 あくまでも一旦の限界であり、終末を思うにはあたらないのだろう。ここを克服すればその先に地平が開くと考えられる。しかしまた、この苦境は、いずれ春になれば、というような風にしては、しのげないもののようだ。(古井由吉『楽天の日々』「節を分ける時」2017年) |
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(大局が見えない至高の通俗道徳家) |