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男は、間違ってひとりの女に出会い、その女とともにあらゆることが起こる。つまり通常、「性交の成功が構成する失敗 」が起きる[L'homme, à se tromper, rencontre une femme, avec laquelle tout arrive : soit d'ordinaire ce ratage en quoi consiste la réussite de l'acte sexuel. ](ラカン, テレヴィジョン, AE538, Noël 1973) |
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三人目の女…私を好ませる女ーーくわばらくわばらーー、この女たちの猫撫で声は疑いもなく、猫の享楽[la jouissance du chat]だよ。それが喉から発せられるのか別の場所から来るのかは私には皆目わからないが。私が彼女たちを愛撫するときを思うと、それは身体全体から来ているように見える。 « Troisième »....me favorise - touchons du bois - me favorise de ce que le ronron, c'est sans aucun doute la jouissance du chat. Que ça passe par son larynx ou ailleurs, moi j'en sais rien, quand je les caresse ça a l'air d'être de tout le corps, (Lacan, 三人目の女 La troisième, 1er Novembre 1974) |
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「男と女のあいだは、うまくいかんもんだよ」、ファルスは始終それを繰り返していた…これは彼の教義の隅石だった。彼はそれをいつまでも声高に主張していた…彼が自分の後で根本的動揺をいだく者がもうひとりもいないことを望んでいたのを思えば、享楽の没収、享楽は結局何にもならないということの証明…だが、それが「うまくいく」ようにできていると言った者がかつていたのだろうか? 面白いのは、そいつが時どき期待を裏切ることができるってことだ…吹っ飛んでしまう前に…もっとも、それがひと度ほんとうに期待を裏切ったとしたら、そいつはとにかく少しはうまくいっている…憎しみのこもった固着に至り着くのでなければ…でもそれだって避けることはできる…ぼくの意見では、ファルスは十分に滑空しなかったんだな…かれはそのことでまいっていたのだと思う…どんな女も彼の解剖学にしびれなかったのだろうか? そうかもしれない…実際にはちがう…気違いじみてもいなかった…後になって「うまくいっている」か、いってないかってことが彼にとってどうでもよくなるには十分じゃなかった…そこから他者たちの生の寄生者たる彼の天性がもたらされる…大いなる天性だ…浸透し、干渉し、妨害し、どこに不一致があるか目星をつけ、そこに居座り、駆り立て、穿ち、悪化させること…ファルスがぼくたちの家でぐずぐずしていたそのやり方のことをぼくはもう一度考えてみる…眼鏡越しにデボラ(モデル:クリスティヴァ)に注がれる彼の長い眼差し…見下げ果てた野郎だ…それは痛ましかった、それだけだ…(ソレルス『女たち』鈴木創士訳) |
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「ヒステリー女が欲するものは何か? ……」、ある日ファルスが言った、「彼女が支配するひとりの主人である」。深遠な言葉だ。ぼくはいつかこれを引用してルツ(モデル:アルチュセール)に言ってやったことがあったが、彼は感じ入っていた。 (ソレルス『女たち』) |
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…時がたつにつれて、ぼくはファルスの突然の怒りがよくわかるようになった…彼の真っ赤になった、失語症の爆発が……時には全員を外に追い出す彼のやり方……自分の患者をひっぱたき…小円卓に足げりを加えて、昔からいる家政婦を震え上がらせるやり方…あるいは反対に、打ちのめされ、呆然とした彼の沈黙が…彼は極から極へと揺れ動いていた…大枚をはたいたのに、自分がそこで身動きできず、死霊の儀式のためにそこに閉じ込められたと感じたり、彼のひじ掛け椅子に座って、人間の廃棄というずる賢い重圧すべてをかけられて、そこで一杯食わされたと感じる者に激怒して…彼は講義によってなんとか切り抜けていた…自分のミサによって、抑圧された宗教的なものすべてが、そこに生じたのだ…「ファルスが? ご冗談を、偉大な合理主義者だよ」、彼の側近の弟子たちはそう言っていた、彼らにとって父とは、大して学識のあるものではない。「高位の秘儀伝授者、《シャーマン》さ」、他の連中はそう囁いていた、ピタゴラス学派のようにわけ知り顔で…だが、結局のところ、何なのか? ひとりの哀れな男だ。夢遊病的反復に打ちひしがれ、いつも同じ要求、動揺、愚劣さ、横滑り、偽りの啓示、解釈、思い違いをむりやり聞かされる、どこにでもいるような男だ…そう、いったい彼らは何を退屈したりできるだろう、みんな、ヴェルトもルツも、意見を変えないでいるために、いったい彼らはどんな振りができるだろう、認めることだ! 認めるって、何を? まさに彼らが辿り着いていたところ、他の連中があれほど欲しがった場所には、何もなかったのだということを…見るべきものなど何もない、理解すべきものなど何もないのだ…(ソレルス『女たち』) |
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ぼくはヴェルト(モデル:バルト)が打ち明けてくれたことを思い出す、彼がノイローゼにかかっていた頃のことで、ファルスの診察室にわりと足繁く通っていた。「あんなところに通うとろくなことはないよ」…彼はまさにそのために動顛させられた…「彼に自分の今までの出来事を話しているうちに」、ヴェルトはつけ加えて言った、「突然わかったんだ、気のふれた奴とおしゃべりするなんて、ぼくはとんでもない阿呆だって」…明快な話さ…(ソレルス『女たち』) |
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ファルスは鍵束を取り出す、およそ十個はある…彼は女たちを自分の家の近くのアパルトマンに住まわせるのが趣味だった…何人いたのか? 三人? 四人? … 〔・・・〕…ファルスに復讐するために。彼はすくなくとも週に十通は殺しの脅迫状を受け取っている…気のふれた奴らのやることだ…海の彼方のあらゆる国々の、頭のいかれた女たち…〔・・・〕 |
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ところが疑念がぼくの心によぎる…もし彼がこういうのを好きだとしたら? これが彼らのエロティックなサーカスの一部をなしているとしたら? ひょっとして、ブラジル野郎は「じいさん」の覗き趣味のために種馬の役目を努めているのだろうか?〔・・・〕 翌日、ファルスがぼくに何も言わずにインド旅行を取りやめにしたことを知る…それから、次の日、アルマンドの家の前の舗道で彼に出会う…「じゃあ、失礼するよ」、彼は疲れ果てた様子でぼくに言う、でもぼくが事の内幕をわかっているのは間違いないと確信して…まるでそのことに言い訳でもするみたいに…彼はどこにいったのか? 食事かな…セリメーヌの覗き窓へ…老いぼれの、おさわりかおしゃぶりの悲惨さにむかって… それっきり会うことはなかった…ほとんど、と言ったほうがいい…ぼくは彼を置いてインドへ行った…ぼくはとにかく彼についてカルカッタでしゃべった…ボンベイで…ディスクールとパロールについての彼の極めて独特な考え方について…むこうの、その何とかってやつに合わせて…サンスクリットだ…(ソレルス『女たち』) |
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そして今、彼は死んだ。カクテ彼ハ身籠リヌ…栄光、最後に彼はそれを手にしたのだ…いっぱい…たいていは孤独だった戦いの日々を重ねて…彼の言ったことを理解した者はほとんどいなかった…彼にはめちゃくちゃな話がたくさんあった、彼の同僚、生徒、教育機関、新聞社との…たいがいは非難されていた。山師の気質、権勢の利用、転移の歪んだ使用、妖術、麻薬、恐喝、自殺…彼の企てが動揺していたことは言っておかなくちゃならない…いずれにしても、見てるぶんには面白い…みごとに現実離れしているし…ファルスはまぎれもなく一種の天才だったのだ。いいだろう、でもいささかやくざなところがあったのも本当だ…彼がその標的になった迫害のために、やくざにならざるを得なかったんじゃないか? そうかもしれない…ほんとうのところはわからない。人生は解きほぐせないものだ…彼は絶対的忠誠と抑え難い憎悪をかきたてた…どちらかといえばそれは良い兆候だ…ファルスは、とにかくたぶん彼がそうなるはずだったものを打ち砕いたか、歪めてしまったのだ…いつも彼は金をたんまりもっていた、これが肝心なところだ。スイスの口座…彼の診察室はすいていることがなかった…診察料は恐ろしく高く…時間は短い…彼が一番非難されたのはこれだった、どうやらテンポってものがあるらしい…地獄の足枷…普通の、公認の、協会に加盟した精神分析家は、一回に四十五分はかける…何が起ころうとも…男のあるいは女の患者はやって来ると、横になって、自分の夢を語る、等々。四十五分、これが必要な「時間」だ…「無意識の時計」…混信の、あるいは分析家に対する多かれ少なかれ抑えられた暴力の十五分。主体の核心に触れる十五分、でもそのうちの三分だけが決定的で、それは三十秒でかたがつく。それから水増しの十五分。これで一丁上がり、お次の方どうぞ…ファルスはといえば、そんなものすべてを覆してしまったのだ…彼は、そんなものはハエがぶんぶん唸っているようなものだと思っていた…それは何もせずに眠っていることだと…それは発見の否定だと…彼の狙いはそいつを蒸し煮にしてしまうことだ…あれでは作業の「毒性」を弱めてしまう、と。 |
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彼の弟子たちがそう言ったように…毒性、毒性って…ウイルスとしての生命…何はともあれ、彼はあえてやったのだ…三分間…こんにちは、さようなら…さあ払ってもらいましょう…こんどはいつ? 国際学会は調査にのりだした…陰口、事件の口にされなかった裏面があった…彼は除名された…それを彼は見事な叙事詩に仕立あげたのだ…彼は「学派」を創立した…運動…連合…結社…そして、そのつど彼はみごとに失敗した…彼は気にせず、続行した…それは形の上では教会の論争にとてもよく似ていた、ギリシャ正教、宗教改革、反宗教改革、そしてさらにもっと似ていたのが、マルクス主義と共産主義の隊列に起こった周期的爆発だ…精神分析のパウロたるファルスをトロツキーの再来と考えることもできた、武装解除された予言者、流謫の予言者、中央権力によって道を誤まった真理の予言者…ユダヤ教会を破門されたスピノザ…神話がひとり歩きした、ファルスは異端であることを自慢しさえした、いずれ異端が正しいということになるだろう…(ソレルス『女たち』) |
………………
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精神分析…すまないがね、許してくれたまえ、少なくとも分析家諸君よ!… 精神分析とは「二者の自閉症」 « autisme à deux »と呼ばれうるものじゃないだろうか? …… la psychanalyse… je vous demande pardon, je demande pardon au moins aux psychanalystes …ça n'est pas ce qu'on peut appeler un « autisme à deux » ?(Lacan, S24, 19 Avril 1977) |
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後期ラカンは自閉症の問題にとり憑かれていた。自閉症とは、後期ラカンにおいて、大他者ではなく、一者が支配することである。 |
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ce dernier enseignement de Lacan est hanté par le problème de l'autisme. L'autisme veut dire que, dans ce dernier enseignement, c'est l'Un qui domine et non pas l'Autre. 〔・・・〕 |
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ラカンはこう言っている、「精神分析は二人にとっての自閉症ではないかという疑問を提起しなければならない」 と。 もし、精神分析が「二者の自閉症」でないならーーそう確信させてもらいたいがーー、ララングではなく、言葉がある 、つまり共有の事柄 があるためだ。だが先ず何よりも「一者の享楽 」、一者のリビドー的神秘の支配がある。 |
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Lacan peut dire -je le cite: " Il faut soulever la question de savoir si la psychanalyse n'est pas un autisme à deux " Si elle ne l'est pas - rassurons-nous -, si elle ne l'est pas c'est qu'il y a la langue et que lalangue, comme le dit Lacan, est une affaire commune Mais le privilège donné à l'Un, à la jouissance de l'Un, au secret libidinal de l'Un, |
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〔・・・〕 |
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後期ラカンの教えにおいて、精神分析はララングによる自閉症の強制である。一者の強制、ララングの大他者による享楽の一者の強制である。 |
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Dans le dernier enseignement de Lacan, la psychanalyse est un forçage de l'autisme grâce à lalangue, un forçage de l'Un, de l'Un de jouissance grâce à l'Autre de lalangue. |
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(J.-A. Miller, LE LIEU ET LE LIEN, 06 juin 2001 ) |
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▶︎ララング文献集 |
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私が「メタランゲージはない」と言ったとき、「言語は存在しない」と言うためである。《ララング》と呼ばれる言語の多種多様な支えがあるだけである。 il n'y a pas de métalangage, c'est pour dire que le langage, ça n'existe pas. Il n'y a que des supports multiples du langage qui s'appellent « lalangue » (ラカン、S25, 15 Novembre 1977) |
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ファルスの意味作用とは実際は重複語である。言語には、ファルス以外の意味作用はない。Die Bedeutung des Phallus est en réalité un pléonasme : il n'y a pas dans le langage d'autre Bedeutung que le phallus. (ラカン, S18, 09 Juin 1971) |
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ララングが、母の言葉と呼ばれることは正しい。というのは、ララングは常に最初期の世話に伴う身体的接触に結びついているから。lalangue… est justifié de la dire maternelle car elle est toujours liée au corps à corps des premiers soins(コレット・ソレール Colette Soler, Les affects lacaniens, 2011) |
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原理の女性化がある。両性にとって女なるものがいる。過去は両性にとってファルスがあった[il y a féminisation de la doctrine [et que] pour les deux sexes il y a la femme comme autrefois il y avait le phallus.](エリック・ロラン Éric Laurent, séminaire du 20 janvier 2015) |
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